2021年10月15日金曜日

「DUNE」&「最後の決闘裁判」(ネタバレ大有り)

 2時間半以上の映画を2本ハシゴ。疲れた。


どっちも長くてだらだらしてるんだもの。

「DUNE/デューン砂の惑星」は155分もあって第一部なのか。まさか第二部中止とかないよね、アニメの「指輪物語」みたいに。てか、もう撮影は済んでるの?

ヴィルヌーヴだから平均点以上は期待できる、と思いましたが、これは平均点以下だろう。

これ見て、リンチの「砂の惑星」ってそんなに悪い映画じゃなかったんだ、と思ってくれる人が増えるとうれしい。

「華麗なるギャツビー」だってさ、ディカプリオ版が出たら、それまでクソミソに言われてたレッドフォード版の株が上がったのよ。

もともとヴィルヌーヴは職人的にうまく作るけど、それ以上じゃないと思ってた。それに対し、リンチは作家、芸術家だからね。あの悪の力強さ、それゆえに際立つ善の純粋さ。初公開時にキネ旬に書いた「砂の惑星」映画評、やっぱり間違ってなかったと思う。ティモシー・シャラメは演技派だけど、カイル・マクラクランの方が新鮮さとカリスマがあった。

ほんとは「ルパンの娘」と「最後の決闘裁判」をハシゴして、「DUNE」は別の日にする予定だったのだけど、どうしても間に2時間以上空いてしまうので、間が20分しか空かない「DUNE」IMAXと「最後の決闘裁判」にしたのですが、IMAXでなくてもよかった。映像に美や迫力がない。


「最後の決闘裁判」は完全ネタバレで行きますが、これ、内容的に見て2時間あれば十分と思ってたのになぜか2時間半強ある。芥川の「藪の中」&黒澤の「羅生門」みたいに3人の視点で事件が語られるのだけど、これが全く無駄。つうか、別にやってもいいけど、どう見たってアダム・ドライバーがレイプしてるの明らかなのに、3人の視点で謎解きみたいなことする必要ないのだよ。

そんな芥川&黒澤のまねしてる暇があったら、もっと人物をきちんと描くべき。

マット・デイモンの騎士はお金に困っていて、それで広い土地を相続するジョディ・カマーと結婚する。一方、カマーは父親が裏切り者の汚名を背負っているので、そういう自分と結婚してくれるデイモンと結婚する。お互い、打算で結婚してるので、イマイチ愛がない感じの夫婦。そこにドライバーがつけこんだみたいな感じで、デイモンがまじめな騎士なのに対し、ドライバーは領主に取り入って年貢の取り立てに精出して気に入られ、領主が奪ったカマーの土地の一部をもらい受けたばかりか、デイモンが受け継ぐはずだった父親の地位まで奪ってしまう。

もう、ドライバーが悪いやつだってのは、視点を変えたって変わらないんだわ。視点を変える意味なし。

それに対し、デイモンは幼い子供のいる貧しい小作人からは年貢の取り立てをしなかったりと、実はやさしい人であることをカマーが知るシーンがある。

カマーに冷たかった義母が実は若い頃、レイプされていて、でも黙っていたからこれまで生きられた、と告白するシーンも、義母をきちんと描いていないのでテーマのために唐突に出しただけになっている。

やっぱり視点を変えるよりも、人物をしっかり描くということをやってほしかった。

テーマは中世版MeTooなので、勇気をもってレイプ告発するカマーと、「君は正しい」と言うデイモンの夫婦が最後に勝利を収める。一方、ドライバーは最後までレイプを認めず、同意だと勝手に思い込んでいる、というあたりはレイピストのリアルだと思う。でも、それを示すのに「藪の中」は必要ない。ドライバー、よくもこういう役を引き受けたと思うが、彼の演技力の賜物の部分は確かにある。

決闘裁判では王妃が途中でカマーに同情するようになるが、他の人々は決闘を見世物にして楽しんでいて、最後、夫婦に喝采を送るけれど、夫婦は冷ややかな目でそれを見ているというのは定番だけど、よい。

レイプ事件のあと、夫婦の絆が深まり、息子が生まれる、という展開も、人物描写が不足なので、ちょっと唐突な感は否めない。最後、字幕で夫の死後も妻はずっと再婚しなかった、と出るが、これは「ラビング」と同じで、妻が夫を死ぬまで愛していたということで、実際、実話がそうなのだろうけど(「最後の決闘裁判」も実話がもとになっている)、再婚しない妻が偉いみたいなのは引っかかるところだ。

あと、ベン・アフレックだけ現代人。中世の領主に見えないわ。

余談だが、昔読んだ西洋中世史の本に、騎士の夫が戦争に出かけた家の妻が狙われる事件が多かった、と書いてあったのを思い出した。それも集団で襲うのだそうだ。この時代、妻の浮気を防ぐために貞操帯というものがあったのだが、実際はレイプを防ぐ意味もあったのかもしれない。