2015年2月16日月曜日

今週の運勢、日本語版の誤訳

先週に引き続き、ジョナサン・ケイナーの今週の運勢です。
が、日本語版に誤訳が!

日本語版(赤字が誤訳)
 「人が愛、称賛、信頼、希望、忍耐といったことを学ぶまで、行動規範という理屈っぽい原則は、人生という名の道にまかれた種のようなもの。その種は道行く 人々が無意識のうちに踏みつけ、ホコリと化す。」これはあなたと同じしし座の 詩人・シェリーが語った言葉です。彼女の言い分に異論を唱(とな)えるつもり はありません。しし座の人々に反論するのは賢明なことではありませんから。

本家の原文
  'Until the mind can love, and admire, and trust, and hope, and endure, reasoned principles of moral conduct are seeds cast upon the highway of life which the unconscious passenger tramples into dust.' So said your fellow Leo, the poet, Shelley. I won't argue. It is never wise to contradict anyone born under your sign.

引用されている詩はパーシー・ビッシュ・シェリーの「鎖を解かれたプロメテウス」という詩劇の一節です。長い作品で、読んだような気もするけど覚えてません。ギリシャ神話のプロメテウスは人間に火をもたらした罪で岩山に縛られ、毎日ハゲワシに内臓を食われるが、内臓は毎日再生するので、苦しみが永遠に続く、という話をもとにしたもので、シェリーはプロメテウスのように神に逆らって人間に火を与える人を称賛してるのですね(そういう詩人です)。
で、このシェリー(男です)の妻メアリが書いた「フランケンシュタイン」の副題が「現代のプロメテウス」で、このプロメテウスの火が「フランケンシュタイン」が書かれた時代では電気、そして20世紀以降では原発を連想させるので、原発事故をルポした朝日新聞の連載にもプロメテウスの名が入っているわけです。「フランケンシュタイン」の科学は生命科学だけでなく、物理学でもあったのですね。
メアリ・シェリーが「フランケンシュタイン」を出版したのは1818年ですが、パーシーの「プロメテウス」は1820年ごろの作品らしい。夫婦で同じようなこと考えならが創作してたのでしょうね。
さて、このパーシー・ビッシュ・シェリー、8月4日生まれのしし座です。実は私は8月5日生まれで、シェリーと1日違い。シェリーの伝記的なエピソードを読むと、わりと私と似た性格だなと思います。ちなみに妻のメアリは8月30日の生まれなので、おとめ座です。男がしし座で女がおとめ座って、けっこういい組み合わせなのかな? そういう歌があったよね。
で、パーシー・シェリーは男なので「彼女」が誤訳ですが(ああ、プロメテウスでシェリーだと今やメアリだと思われるのか。世の中変わった)、もう1つの誤訳は「道行く人々」。原文見ればわかりますよね、the unconscious passenger、単数形です。そのあとも動詞に三単現のsがついてるぞ。パーシー・シェリーを知らないのはまだしも、こっちは中学1年生レベルの誤訳じゃ。
しかもtheがついているから、この通行人は特定の人物なのですね(なんとなく誰かは想像できるけど、全文読まねば)。
そんなわけで、この詩の引用部分、ほかにも誤訳があるかもですが、それはそのうち確かめます。
ジョナサン・ケイナーの星占い、以前は明らかに日本語が変だったので、必ず本家のサイトで原文をチェックしてましたが、ある時期からおかしな日本語でなくなったので、チェックしなくなっていました。でもやっぱり誤訳というか、ケイナーの意図がわかってない訳がやはりあるのだな。