2023年9月24日日曜日

「世にも怪奇な物語」

 10代の頃、テレビで見て、ロジェ・ヴァディムの第1話とルイ・マルの第2話は面白くないけど、フェリーニの第3話がひたすら怖かった記憶のオムニバス映画「世にも怪奇な物語」。映画館で見られるチャンスがあったので、見てきた。


ホラー秘宝祭り10周年だったんですね。上のカードは県立図書館でもらった千葉県150周年記念のカード。

エドガー・アラン・ポーの短編を3人の監督が自由に脚色しているのだが、フェリーニの第3話は最初から映像が怖いというか不気味。それに比べるとヴァディム、マルは全然ホラーじゃない。やっぱりフェリーニは怪奇と幻想が得意なんだな、他の2人も個性は感じるものの、どちらもコスチュームもののドラマ。

ヴァディムの第1話はジェーンとピーターのフォンダ姉弟共演で、当時ジェーンはヴァディムの妻だったのだけど、セクシーな衣装をとっかえひっかえ着て出てきて、この頃のジェーンはセクシーさ満開であったのだ。ヴァディムと別れたあとはセクシーを封印し、ベトナム反戦運動と演技派女優の道を歩むことになる。

ルイ・マルの第2話は原作が有名な「ウィリアム・ウィルソン」で、アラン・ドロンとブリジット・バルドー共演。第1話も第2話も主人公が極悪非道なやつ。邪悪なジェーン・フォンダに対して極悪なアラン・ドロンもまたよいという点では見どころがあったし、冒頭の描写はルイ・マルらしさを感じた。

しかし、フェリーニの第3話を見ると、ヴァディムもマルも前座に見えてしまう。それくらいフェリーニのは力が入っていて、音楽もニーノ・ロータ。テレンス・スタンプの狂気の演技も見ものだが、ヴァディムとマルがスター中心の作品だったのに対し、こっちは完全にフェリーニの映像世界。

もう最初から人物の表情とか怖いのである。後半、赤いフェラーリに乗って突っ走るところも怖い。そしてラスト。

主人公はシェイクスピア役者で、「マクベス」のせりふを暗唱するが、そこで、イタリア人がシェイクスピアを「ダンテの次に偉大」と言う。イタリア人にとってはダンテが最高の詩人なのだな、と思ったが、「神曲」でダンテが女性によって天国へ導かれるのに対し、この話では主人公が女性によって地獄へ導かれる。この女性、記憶では幼い少女だと思っていたけれど、ある程度の年齢の少女、若い女性という感じだった。