2018年9月25日火曜日

ジェームズ・ウッズ、ツイッターを凍結される

ジェームズ・ウッズが選挙に関する有害なツイートをしたということで、ツイッターを凍結されたそうです。記事(英語)。
https://apnews.com/2909e6d34b1c4d18bfac5cd186a54095

1984年、「カリブの熱い夜」と「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」を見て以来、ウッズの大ファンでしたが、彼が保守派だということは知っていました。
「サルバドル」など社会批判の映画によく出ていたので、バリバリの保守タカ派と知って驚く人も多いようですが、80年代から保守派でしたよ。
あと、性格面で問題がある人だな、ていうのも感じていました(会ったことないけど)。

それでも、彼はリベラルな映画でリベラルな役を演じることが多かったし、「サルバドル」の頃はアメリカ批判もしていたので、「極右も極右で、ツイッターでデマばかり言っている」というアメリカ在住の人のツイートを見て、へえ、彼も年とって老害になってしまったのか、とため息。

ウッズはエリア・カザンの自主映画「突然の訪問者」で映画デビューしてますが、「カザンは恩人だけどマッカーシズムのときの行動は許せない」とリベラルなこと言ってるんですね。
続く「追憶」ではバーブラ・ストライサンドのヒロインとともに政治活動する左翼の学生役。テレビ「ホロコースト」ではメリル・ストリープと結婚する役で、ナチスの強制収容所で抵抗するユダヤ人画家の役。ゴールデン・グローブ賞を受賞した「オニオン・フィールド」で悪役として名をはせ、「ヴィデオドローム」のような斬新な映画に主演したりして、そして大作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」でロバート・デニーロの相手役に抜擢されます(悪役だけど)。
その後はオリヴァー・ストーンの「サルバドル」でだらしないが正義感も強いフォト・ジャーナリストを演じ、アカデミー賞ノミネート。「トゥルー・ビリーヴァー」では正義派の弁護士。「そろそろ悪役はやめようと思っていたけれど、あまりにおいしい役なので断れなかった」という「殺しのベストセラー」は大好きな映画で、ウッズの魅力が炸裂。このほか、グレン・クローズと共演したファミリーものやマイケル・J・フォックスと共演したコメディなど、役柄も広がり、しだいにおだやかな役が多くなっていきますが、最近はもう、あまりいい映画に出てないみたいなので、フォローしなくなっていました。最後に見たのは「スティーブ・ジョブズ」で退学したジョブズに「ニセ学生で授業に出ろよ」と言う教授役でちょっとだけ出てたときかな。

ウッズが性格面で問題ある人だな、と思ったのは、80年代後半に起こったショーン・ヤングとの「危険な情事」事件です。
あの事件はヤングがストーカーやいやがらせをしていたので、完全にヤングの方が悪いのですが、そのときのアメリカの雑誌数冊で読んだ記事だと、ウッズもどうかなと思うような態度なんですね。もともと両方ともパートナーがいるのにダブル不倫して、ウッズの恋人が怒ったのでウッズはヤングとつきあうのをやめ、それでヤングが怒って「危険な情事」状態に陥ったらしいのですが、恋人になじられたウッズがキレまくったとかいうことが雑誌に出ていたんですよ。それ読んで、この人ヤバイなと思いました。
ウッズはその後、恋人と結婚しますが、すぐに離婚しています。どうも家庭を持つことに向いてない人みたいな感じ。

ウッズが保守派というかタカ派だな、と思ったのは、やはり80年代後半、「グッドモーニング・バビロン!」のD・W・グリフィスの役を断ったときです。当時、ヨーロッパではアメリカ人をねらったテロが起こっていて、この映画はイタリアで撮影されることになっていたので、テロが怖くてウッズは断ったのだそうですが、このときの言い分が、「ヨーロッパの女たちがロシア人にレイプされるのを防いだのはアメリカなんだぞ」とかなんとか。
テロが怖くて断ったってのがチキンな上に、それに輪をかけてああいう物言いはどうよ、この人、案外小心者で性格問題あるのね、と思ったあとに、あのショーン・ヤングとの事件が起こったのです。

ウッズは超頭のいい人しかもらえない奨学金をもらってマサチューセッツ工科大学に進学、IQもすごく高くて頭がいい人として知られています。実際、インタビューを見ると、頭のよさが歴然なのだそうです。
が、そのわりには、80年代からすでにああいう発言とか、ああいう事件とか、頭はいいけど言動がちょっと、と思ってました。
ある面ではものすごく優秀だけど、別の面ではバランスを欠くとか、そういう感じかもしれない。
ウッズはリベラル派ではないけど、かつてのリベラルな発言は本心からだと思うのです。
その一方で、タカ派のアメリカ万歳なところもあって、これも本心だと思う。
で、年とともにタカ派の老害になってしまったのかもしれない。

上の記事では言論の自由とか言ってるけど、歯に衣着せぬ発言というのはこの人の特徴だったのです。リベラルな発言も、タカ派の発言も、どちらも歯に衣着せぬ本音の発言だったと思うのです。そして、かつては彼のそういう発言がスカッとするものだったのも事実です。
だから、本人は自分は昔から言いたいことを言ってきた、どこが悪い、と思ってるんでしょうが、まわりから見たら完全に老害になってるんでしょうね。
まあ、別に残念という気持ちはないです。70年代から80年代の、すばらしい役者としての彼が好きだっただけですから。