2013年3月13日水曜日

ローマでアモーレ

「ミッドナイト・イン・パリ」が大好評だったウディ・アレンの新作「ローマでアモーレ」を見てきました。
原題はTo Rome with Loveと、ローマへ愛をこめて、なんですが、「ローマでアモーレ」って、「電話でアモーレ」って映画があったよね、と思ってしまう。
それはともかく、私はこの映画、「ミッドナイト・イン・パリ」より好きだ!
前作は確かにソフィスティケイテッドな作品でしたが、その分、どうも、私には物足りない、という感じでしたが、今度の新作はローマを舞台に4つの物語が進行するコメディ。4つのうち2つはイタリア人の人物しか出てこないので(役者はスペイン人のペネロペ・クルスが演じていたりしますが)、せりふもイタリア語オンリー。残りの2つがローマに来たアメリカ人の話。
そして、何より、ウディ・アレンが久々の映画出演に加え、あのイタリアのコメディアンにしてコメディ映画の監督ロベルト・ベニーニが主演者の1人に。
残念ながら、ベニーニとアレンは同じシーンには出ていませんが、ベニーニがアレンの映画に出るとはね。もっとも、彼は自分の監督作以外では意外とおとなしめで、この映画では平凡で実直なサラリーマンを演じています。
4つの話はどれも面白いのですが、アレンが登場する葬儀屋テノール歌手の話が一番気に入っています。この話で、ローマを訪れたアメリカ女性がイタリア青年と恋に落ち、アメリカから両親(アレンとジュディ・デイヴィス)がやってきて、双方の親が会う、というものですが、アレンは元オペラのプロデューサー、そして、イタリア青年の父親の葬儀屋が、なぜか、シャワーを浴びながら歌うと一流テノール歌手になってしまうという美声の持ち主(本物のテノール歌手ファビオ・アルミリアートが演じています)であることがわかり、アレンは彼を主役にオペラの演出に乗り出す、という話です。
しかし、この葬儀屋、シャワーを浴びてないときは美声じゃない、ということで、どういう舞台になるかは見てのお楽しみ。
しかし、日本では、お風呂で歌を歌うとうまくなる、と言われていますが、西洋ではシャワーを浴びながら歌うとうまくなると言われているらしい(?)。で、この葬儀屋の家は、シャワールームがあるのですが、もしかして、バスルームはない? 「テルマエ・ロマエ」の欧米暮らしの作者が、マンションの部屋にバスタブがない、ということを書いていましたが、あちらではバスタブがなくシャワーだけでも平気らしいです。
そんなわけで、日本だったら絶対、バスタブにつかって歌うところ、シャワーを浴びながら歌ってるわけです。せっかくの歌声が、シャワーの音が邪魔だな、と思ったのは私だけか?
さて、ローマといえば、「テルマエ・ロマエ」ですが、ペネロペ・クルスが登場する話は、田舎の新婚カップルがローマの親戚を訪ねてくるエピソード。カップルはまず、ローマの終着駅、テルミニ駅に到着します。テルミニ駅といえば、ヴィットリオ・デ・シーカの「終着駅」の舞台。こちらはイタリアの監督の映画だけど、主演がジェニファー・ジョーンズとモンゴメリー・クリフトだったので、せりふは英語でした。で、このテルミニ駅、てっきりターミナルという意味なのかと思ったら、近くに古代ローマの浴場(テルメ、ラテン語がテルマエ)があったからテルミニ駅と名づけられた、とプレスには書いてあります。
知らなかった! 「終着駅」だからてっきり「ターミナル・ステーション」という意味かと思ってました。
日本語の終着駅という言葉は、この映画の邦題ために作られた言葉だと、どこかで読んだことがあります。今でも、終着駅ではなく、終点というのが普通ですからね。
この新婚カップルのエピソードは、夫と妻が両方とも、一度限りの不倫をしてしまう、という話なのですが、ハリウッド映画はある時期から不倫に対して妙に潔癖になってしまっていたので、こういう不倫コメディはめずらしいというか、久しぶりというか、でも、おおらかでいいじゃないか、と思います。
アレック・ボールドウィンが若い頃に住んでいた家に来て、そこに住む若い男女の恋の行方に口をはさむ、というエピソードもふしぎな面白さがあります。ボールドウィンは現実の人間というよりは、まるで霊のような、ある種のスピリチュアルな存在のようにも見えます。
そして、ベニーニが主役のエピソードは、ある日突然、有名人になってしまった平凡な男の話。マスコミによって作られる有名人というものが皮肉に描かれています。
ローマの名所が次々と登場し、イタリア・オペラの名曲やカンツオーネが流れて、いかにも明るいイタリア、という映画です。スサンネ・ビアの「愛さえあれば」もイタリアが舞台でしたが、両方とも、外国人の見たイタリアで、前に書いたイタリア映画のイタリアとは趣が異なりますが、やっぱりイタリアは明るくて楽しそうで、幸せな気分にさせてもらえます。

関連記事
「ローマでアモーレ」(2)
「ローマでアモーレ」(3)
「ローマでアモーレ」(2)の補足
右サイドにリンクがあります。