2024年8月29日木曜日

「画家ボナール」&「花嫁はどこへ?」

 試写で見せていただいた2本、「画家ボナール ピエールとマルト」と「花嫁はどこへ?」。


「画家ボナール」はフランスの画家ピエール・ボナールと妻マルトの伝記で、ボナールは「ボレロ 永遠の旋律」のラヴェルとも親交があったので、まさに同じ時代。「ボレロ」はいろいろ斬新なところもあるけれど、全体としては消化不良だったのに対し、こちらはオーソドックスな作りで、脚本もうまい。

ボナールはマルトと長年、内縁関係にあり、その後、正式に結婚もするのだけれど、マルトがいないと創作ができないにもかかわらず、他の女性と恋愛関係を続ける。マルトはミューズとしてキープしておいて、恋愛は他の女性と、という感じ。当然、マルトの気持ちは穏やかでない。

前半はパリの女王と呼ばれたピアニスト、ミシアとマルトの対立が描かれる。ミシアは当時の芸術家、音楽家、作家などと広いつきあいがあり、結婚離婚を繰り返した女性だが、現実のミシアは映画に描かれたようなボナールとの深い関係はなかったみたいで、彼女の夫の名前も架空になっていることから、ミシアをモデルにした女性ということだろう。

優れたピアニストでありながら、ピアニストとして生きず、男関係に生きているミシアを、マルトが批判するシーンが圧巻で、ここは前半の見せ場。後半、マルト自身が絵を描き始め、個展も開くようになることにつながる。

後半はボナールが美術学校の生徒ルネを愛人にし、彼女との結婚も考えるが、やはりマルトがいないと創作ができないと悟って彼女のもとを去り、マルトと正式に結婚するが、そのとき、というところでドラマが急展開。そして時代は飛んで晩年のボナール夫妻となるが、この最後の部分も見ごたえがある。夫妻の友人だったモネがマルトに言った言葉が伏線回収になっているが、ピエールはその意味を理解できない。

ボナール夫妻が住む田舎の風景が美しい。印象派の絵画、特にモネの絵のようだ。西洋美術館で見たボナールの絵やリトグラフの世界とはだいぶ違う映像なのだけれど。

ボナールの絵は西洋美術館の常設展に1枚展示されていて、さらに9月1日まではリトグラフが常設展の中で展示されている。台風だけど、リトグラフをもう一度見たい。

9月1日までのリトグラフ展のボナールのコーナー。



「花嫁はどこへ?」はインド映画で、同じ列車に乗った2人の花嫁が同じ衣装とベールだったので、取り違えられてしまう話。

2組のカップルのうち、片方は貧乏だけど愛し合って結婚した夫婦、もう片方は男が金目当てで、花嫁はいやいやながら結婚させられた。しかも、男は前の妻を殺した疑いがある。

貧乏な方の花嫁は貧しいがたくましく生きる人たちに助けられ、特に屋台のおばさんからは女も自立して生きることの大切さを教わる。

もう一方の花嫁は学があり、自立した女性で、大学に進学して農業を学ぼうとしていたが、母親から結婚を強制される。間違えて別の花婿の実家へ行ったのをチャンスに夫から逃れようとする。また、周囲の人々とも親しくなり、花婿が行方不明の花嫁を深く愛していることを知って、なんとかしてあげたいと思う。

そこに自分の利益しか考えない警察や政治家がからみ、2人の花嫁をめぐる人間模様がコミカルに描かれている。大学進学をめざす花嫁が村の若い女性に画才があることを知り、その才能を役立てるようにさせたりと、片方の花嫁は屋台のおばさんから自立した女性になることを促され、もう片方の花嫁は逆に村の女性の才能を生かさせる、という具合に、2人の花嫁を通して女性の変化成長を促す感じになっている。

インド映画としては短い2時間ほどの作品だけど、全体にのんびりしていて間延びするところもあるが、後半はドラマが急展開して面白くなり、最後は気持ちよく終わる。