「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」の監督・主演による歴史ドラマ「愛を耕すひと」。
「ロイヤル・アフェア」が非常によかったので、期待していました。
「ロイヤル・アフェア」の映画評はこちら。
さーべる倶楽部: ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮(ネタバレ大あり)
「ロイヤル・アフェア」が18世紀後半だったのに対し、「愛を耕すひと」は18世紀初頭。デンマークはとにかく他のヨーロッパ諸国に比べ、遅れていたようで、中世か、と思うような描写が多いです。
主人公はデンマークの荒れ地を開拓する野望を持つ元軍人。これまで何度開拓しようとしても成功せず、あきらめられていた大地に挑む、ということで、国王から開拓の許可を得て、協力者たちとともに土地を耕そうとするのだけれど、近くの領主が残酷な独裁者で、あの手この手を使って妨害。協力者たちも逃げてしまい、元軍人と若い聖職者、領主の召使だった女性とタタール人の少女の4人が疑似家族のようになって働き、ついにじゃがいもの収穫に成功、国王からも正式に測量士として認められ、ドイツから入植者も来て、これでうまく行くと思いきや、領主がさらに汚い手を使ってくる、という話。
この領主、まだ若いのだが、精神がかなりおかしくて、人を平気で殺す。主人公は国王のお墨付きをもらっているのに、国王の力が辺境の地には及んでいないようで、領主はやりたい放題。後半は主人公たちも身を守るために武器をとらざるを得なくなり、血なまぐさい話になっていく。
原作は史実をもとにした小説ということだけれど、「ロイヤル・アフェア」に比べると人物がタイプ化されていて、深みがない感じがした。
主人公、聖職者、元領主の召使、タタール人の少女、領主、そして、領主の従妹で主人公に惹かれる貴婦人、といった人物は魅力的で、特に女性2人と少女は印象的だが、やっぱり人物としての深みや複雑さがないのがドラマを浅くしているように思う。
18世紀初頭のデンマークが暗黒の中世のようで、権力者がすべてを支配し、正義などなかったのはよくわかったが、それだけにもう少し深みが欲しかった。俳優は好演しているが、脚本がいまひとつ、力不足の気がした。
見たのは亀有。
MOVIX三郷が閉館したせいか、亀有でもアート系っぽい映画をやるようになって、それはありがたいのだけど、前からアート系をやっていた流山おおたかの森や柏の葉、そしてへき地なので有象無象が来ない松戸の映画館に比べると、亀有はちょっとアート系は雰囲気が合わないのかな、と思うようなところがあった。もっとも、「愛を耕すひと」はヨーロッパ映画なのでアート系ぽく見えるが、デンマークではエンタメ系の歴史ドラマなのだろうと思う。