2025年3月2日日曜日

「名もなき者」&「アノーラ」(ネタバレあり)

(3月3日追記 「アノーラ」がアカデミー賞作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞の最多5部門受賞! おめでとう! 候補作のうち、見た映画では「アノーラ」が一番よかったので、絶対受賞してほしかった。一番、どころか、「アノーラ」ダントツでよかったです。イチ押しして最大箱当ててるMOVIX、これからお客さん、たくさん来ますように! )

金曜は徒歩35分のシネコンに「名もなき者」を見に行ったのですが。



これが全然面白くない。私がボブ・ディランに詳しくないからだろうか?

1960年代前半、20歳でニューヨークに出てきたディランが、フォークの世界に不満を持つようになり、ついにフォークのフェスティバルにエレキギターを持ち込んでロックをかました、という話、という理解でよい?

しかし、その間が全然面白くない。60年代前半は私は小学生だったので、この時代の音楽界はリアルタイムではわかってなかったけれど、その後、フォークというのは反戦などを歌った歌だ、という認識でいたんだけど、この映画を見ると、フォークのファンの大部分はミーハーで、デビュー当時のディランは自分の歌を歌わせてもらえず、フォーク界の大人たちは保守的で、といった、中学生頃に得た私の認識を大きく覆すものだった。

でも、最後に字幕で、ジョーン・バエズなどが反戦などの社会批判の歌を歌い続けた、みたいな賛辞が出るのね。

この辺を抜きにしても、ディランが音楽を作る過程よりもディランの女性関係の方に話の中心が行ってしまっているようで、なんだかなあ、な映画であった。ただ、自分で歌っている俳優たちがみな、歌がうまいのには感心した。

「アノーラ」は月曜日以降に見る予定だったのだが、月曜から水曜は雪予報だし、「名もなき者」にあまりにもがっかりしたので口直しの必要もあったから、土曜日に見に行った。ファーストデーだけど、とってもすいていたMOVIX柏の葉。MOVIXは今回、無料回だったのを忘れてお金払ってしまった。ま、次に使えますが。


柏の葉は最大箱ですが、ガラガラだった。


MOVIX亀有は月曜から最大箱で、柏の葉の最大箱より大きいスクリーンなので、ほんとはそっちで見たかったのだが、柏の葉で見ても映画は十分満足な出来栄えでした。

ストリッパーで売春もしているアノーラがロシアの大富豪の息子イヴァンと知り合い、専属契約で2週間一緒にすごしたあと、その勢いで結婚してしまう。アノーラは玉の輿目当て、イヴァンはアメリカ人と結婚してアメリカに住み続けたい、という下心はあるものの、基本的には愛し合っての結婚。が、イヴァンの親が息子が娼婦と結婚したと怒り、破談にするために男たちを差し向け、両親もロシアからやってくる。

アノーラはロシア系アメリカ人で、イヴァンの側はロシア人やアルメニア人なので、ロシア語のせりふが非常に多い。アメリカの話だけど、この辺、外国語映画っぽかった。

男たちが来るとイヴァンはさっさと逃げてしまい、逃げ遅れたアノーラが離婚を要求されてひどい目にあうのだが、アノーラは頑として離婚に応じない。男たちは暴力はふるうなと言われているので、暴力はふるわず、逆にアノーラから暴力を受けたりするのだが、基本的に、この男たちもイヴァンの両親も悪人ではない。ただ、脅せばなんとかなるみたいにガンガン来るので、アノーラもそれに負けじとガンガン行く。

アノーラはなぜ、離婚に応じないのか? 財産が欲しいから? いや、そうではない、というのがラストでわかる。

男たちの1人、イゴールという寡黙な男が、しだいにアノーラに同情するようになっていく。

以下、ネタバレ。

逃げていたイヴァンが発見されると、このイヴァンという男、実は母親に逆らえないマザコンだということがわかる。アノーラと結婚したのも、ロシアに帰りたくない、母親の支配から逃れたい、というのがあったのだろう。しかし、親たちがやってくると逃げ出し、見つかったときにはアノーラに愛されるに値しない、しょうもないダメ男だということがわかる。結局、彼は母親に支配される息子に戻り、アノーラは離婚に応じる。

冒頭のイヴァンは好感の持てる青年だったのだが、後半、登場してからはほんとうにダメ男で、アノーラも愛が冷めるだろうと思ったのだが、ラスト、イゴールと2人きりになるシーンで、アノーラがイヴァンを真剣に愛していたことがわかる。奪われた結婚指輪をイゴールが取り戻してアノーラに渡すところからの一連の流れに、アノーラの気持ちがにじみ出ている。でも、アノーラは失恋を乗り越えて生きていくだろうし、むしろ、イヴァンが失ったものの大きさを感じさせるラストだ。