2024年6月26日水曜日

なつかしのルルーシュ監督「レ・ミゼラブル」

 月曜は仕事の帰りに今月末で閉店が決まっている上野のABABへ。

どのフロアも残り商品が少なく、がらんとしていて、ひととおり見て回ったけれど、寂しさが募るだけだった。にぎやかだった頃の店内の様子が思い出され、こういう姿は見たくなかったと、来たことを後悔してしまった。

携帯で写真を撮ったけれど、パソコンに移す方法がわからず。

千代田線の湯島の秋葉原寄りの出口から出て、そこから松坂屋の方へ行く道がすぐにはわからず、あぜん。ここはかつてはよく歩いた場所だったというのに。末広町近くのマックに久々に入ったけれど、ここも客席がかなり変わっていて、昔の面影がなかった。

というところで、試写で見せていただいたジャン・ポール・ベルモンド傑作選グランドフィナーレの3本。


フィリップ・ド・ブロカ監督、ジャクリーン・ビセット共演の「おかしなおかしな大冒険」とクロード・ルルーシュ監督「ライオンと呼ばれた男」は今回初めて見た。

ベルモンドというと、今はゴダール作品がまず出てくるようだが、私のような古い世代だと、やっぱり「リオの男」のド・ブロカ監督だよね、ベルモンドの監督といったら。冴えない作家と、彼が書く荒唐無稽なスパイ小説の主人公が並行して描かれ、同じ俳優が小説と現実で二役、という手法はこれ以前にもあるけれど、ベルモンドの陽気な魅力が全開。ビセットも美しかった。

「ライオンと呼ばれた男」は捨て子から実業家になった男の人生を時間軸を少し変えながら描いていくもので、これはもうベルモンドのための映画でしょう。

そして、同じルルーシュ監督による「レ・ミゼラブル」。初公開時、試写で見てとてもよかったので、知り合いの編集者にすすめたりしたのに、全然話題にならず(ゴールデングローブ賞受賞なのに)、その後も忘れられた作品になってしまっていた。キネ旬の1990年代ベストテンで、私の選ぶベストテンの1本に入れたけど、私以外の人は誰も入れてなかった。

ただ、内容はかなり忘れていて、20世紀後半、特に第二次世界大戦中のフランスが舞台、ということくらいしか覚えていなかった。あらためて見ると、ユーゴーの原作が生かされたユニークな「レ・ミゼラブル」だということがわかる。

冒頭、ジャン・バルジャンが煙突掃除の少年の落としたコインを取ってしまうシーン、これはジャンが神父に助けられたすぐあとのできごとで、神父に助けられてすぐに改心したわけではなかったことがわかる。それほど彼は長い投獄生活で傷つき、世の中を恨んでいたのだろう。だが、この出来事のあと、彼は真に改心する。

有名な神父に助けられるシーンでなく、これを冒頭に持ってきたところにこの映画の肝があるわけで、つか、初めて見たときも確かにそう思ったよね、と思い出したのだが、ユーゴーの描く人間の複雑さをさまざまな人物で表現した映画だと思う。

ベルモンドは主人公たちの1人にすぎず、彼以外の人々のシーンも多い。特に、負傷したユダヤ人を救った農家の夫婦が、妻がユダヤ人に恋してしまったことから人生を狂わせる後半のエピソードが深い。ティナルディエ夫婦は悪人だけどいいこともした、と語る人が出てくるけれど、この夫婦の複雑さにもそれが現れているのだろう。

クライマックスで流れる音楽が「頬寄せて」だということも忘れていた。「カイロの紫のバラ」、「グリーンマイル」もこの曲が効果的に使われていたが、この2本では「トップ・ハット」の映像とともに出て来たのに対し、こちらは音楽だけさりげなく。「ライオンと呼ばれた男」はルルーシュらしい派手な音楽があちこちに流れたけれど、「レ・ミゼラブル」は音楽は控えめな使われ方だった。

なんにしても、「男と女」、「愛と哀しみのボレロ」と並ぶルルーシュの傑作「レ・ミゼラブル」なのです。