今年はなかなか梅雨入りしないのですが、いよいよ今週末には梅雨入りしそう。
先週の金曜日に撮った八柱霊園のアジサイ。ここはアジサイはほとんどなくて、この時期は見るものがありません。日差しが強く、日陰に入ると蚊が出てくるので、早々に退散。人も非常に少ないというか、ほとんど見ませんでした。実は八柱霊園、7月から9月はまだ1度も行ったことがない。
試写で見せていただいたポーランド映画「フィリップ」。21日公開です。
ワルシャワのゲットーに住むユダヤ人フィリップは、ゲットーの大虐殺で恋人や家族や友人を失い、2年後、フランス人のふりをし、フランクフルトの高級ホテルでウェイターとして働いています。
時は第二次世界大戦中。ナチスの支配する世界。ホテルにはさまざまな外国人が働いていて、当時のドイツはドイツ人しかいないのかと思っていたら、こんなに外国人がいたのか。
彼らはドイツ人の女性と恋に落ちたり、関係を持ったりするのですが、当時のドイツは純血主義。外国人と関係を持ったドイツ人女性はアーリア人の血を汚したとして髪を切られ、ひどい目にあう。外国人の方はやはり血を汚したとして死刑執行。
ナチスドイツのこういう状況を大きく取り上げた映画はこれまで見たことなかったので、驚いた。
フィリップは復讐のためにドイツ人女性を次々とかどわかして関係を持つ。愛はないので、キスは拒否。ドイツ人女性の中には夫が危険なロシア戦線で戦っている人もいて、そういう女性には、夫は戦死すると冷たく言い放つ。
フィリップと関係を持つ女性の中には差別意識丸出しの人もいれば、そうでない人もいる。また、ドイツ兵は大部分がロシア戦線のような危険な戦場に送られ、その一方で、アウシュヴィッツのような強制収容所で働くドイツ兵は命の危険がなかったのだ。
「関心領域」に出てくるドイツ人は、まさに後者だった。
フランクフルトに来てからのフィリップには、2度の大きな変化がある。1つは、ドイツ女性を復讐のためにものにしていた彼が、真剣な恋をしてしまうこと。愛したドイツ人女性は差別意識のない人。ここで初めて彼はドイツ人女性とキスをする。そして、その前につきあっていたドイツ人女性にもキスをし、彼女にやさしくふるまう。その女性はドイツ社会に迎合せず、自分の生き方を貫いてきた人で、外国人との恋がばれて髪を切られても自分の生き方を貫く。そんな彼女を、フィリップは賞賛する。
ゲットーにいた頃の知り合いのポーランド人女性がフランクフルトに来てフィリップと再会するというエピソードもあるが、このポーランド人女性は恋仲にはならず、別の目的があったことが最後にわかるが、この辺りも含めて、少しわかりづらいところがいくつかある。原作を読めば、あるいは歴史背景をよく知っていたら、よくわかるのかもしれない。
ほんとうの恋をしたことで復讐ではなく幸福を求めるようになったフィリップだが、もう1つの大きな変化が訪れる。(以下ネタバレ)ホテルの同僚である親友がワインを隠し持っていたことがばれて、その場でナチ将校に射殺されてしまうのだ。しかも、そのワインにはフィリップも関係していたが、親友だけが殺され、怒って「俺も殺せ」と言った彼は殺されない。フィリップは復讐の鬼と化し、恋人を冷たく突き放して別れ、無差別殺人に突っ走る。子どもや女性もかまわず。
ラスト、フィリップがどこへ行くのか、彼はどうなるのか、映画はオープンエンドのまま終わる。
「関心領域」ばかりが話題になって、こっちは話題になっていないみたいだけれど、大変見ごたえのある映画だった。