2018年7月18日水曜日

「チャーチル ノルマンディーの決断」

ウィンストン・チャーチルがノルマンディー作戦に反対だったという新事実(?)を映画化した「チャーチル ノルマンディーの決断」の試写を見に行った。
ロッテントマトでは評価がだいぶ低かったが、「レイルウェイ 運命の旅路」のジョナサン・テプリツキー監督だったので、一応見ておこうと思った。「レイルウェイ」は好きな作品。
だが、やはりトマトの評価は正しかったようで、いろいろ不満の多い出来栄えだった。
特に妻と秘書の描写がゲイリー・オールドマン主演の「ウィンストン・チャーチル」と瓜二つで、まあこれがチャーチル伝の定番なのかもしれないが、妻はまだしも秘書はダンケルクのときとは別人のようなのに同じエピソードを使っている。ミスを怒鳴るチャーチル、というやつで、そのミスも単語のつづりを間違えたことと、ダブルスペースにしなかったことで、まったく同じ。おそらくダンケルクのときの秘書の手記をもとにノルマンディーのときの秘書を創作したのだと思うが、秘書の人物造型も似ていて、チャーチルが妻と秘書を通じて変化していくのも同じような展開。最後に演説、というのも同じ展開。
ここまで似てくると、やはり「ウィンストン・チャーチル」の方が面白かったので、こちらは非常に分が悪い。
飛ぶ鳥を落とす勢いだったダンケルクの頃に比べ、ノルマンディーの頃は落ち目になっていたようで、またうつ病のような状態でもあったらしいが、そんな彼がいかに時代から遅れているかを次々と見せられるのもつらい。チャーチルの考える戦争は第一次世界大戦、いや、前世紀の戦争、とまで言われ、実際、彼もドイツ軍が毒ガスを使うとか、第一次大戦の話をしている。
チャーチルは第一次大戦のときに軍事作戦で大失敗し、多くの兵士を死なせたことがトラウマになっている、というように描かれているが、このあたりの、チャーチルはノルマンディー作戦に反対だったというのがどの程度真実なのかわからないのも眉に唾をつけてしまう。
同じ監督の「レイルウェイ」は「戦場にかける橋」の元になった日本軍の鉄道建設に従事させられたイギリス兵の捕虜が無実のスパイ容疑で憲兵隊の拷問を受け、戦後はそれがトラウマになっていた、という実話の映画化で、憲兵隊の通訳だった日本人が戦争の悲劇を忘れないための記念館をやっていると知り、会いに行く。そこで元通訳に怒りと憎しみを抱く主人公だが、それを真摯に受け止める元通訳の姿にやがて憎しみが消え、2人の間に友情が生まれる、という、これまた実話の展開を映画化している。このコリン・ファースの演じた元捕虜の戦後のトラウマと、彼を支える妻(ニコール・キッドマン)の姿が今回のチャーチル夫妻の描写に引き継がれている感じがした。真田広之の演じた元通訳のような人物がいないのが物語の底を浅くしているのかもしれない。
要約すると、どちらも過去の戦争のトラウマに悩まされる主人公がそれを克服するという点が共通しているのだが、「チャーチル」の方は「レイルウェイ」のような奥深いドラマがないこと(「レイルウェイ」に比べてトラウマの克服のドラマが弱い)、オールドマンの「ウィンストン・チャーチル」と比べて見劣りすることが大きな欠点になっているような気がする。