2022年7月19日火曜日

「キャメラを止めるな!」

 「アーティスト」のミシェル・アザナヴィシウス監督による、「カメラを止めるな!」のリメイク。


カンヌ映画祭のオープニングを飾るなど、話題にはなっているが、近隣では字幕は午前中や夜のみが多い。その中でTOHO市川コルトンプラザでは午後の上映があり、しかもお気に入りのスクリーン9なので、日曜日に出かけた。

カンヌ映画祭の模様。ミシェル・アザナヴィシウス監督『キャメラを止めるな!』カンヌでワールドプレミア! | Fan's Voice〈ファンズボイス〉 (fansvoice.jp)

アザナヴィシウス監督はわりといろいろなジャンルの映画を撮っていて、何でも屋的な人に見えるが、これは映画がらみのコメディという点でアカデミー賞作品賞の「アーティスト」の系列。映画がらみだと「グッバイ、ゴダール」もあるが、これは実話がもとであまり面白くなかったし、リメイクなら「山河遥かなり」の現代版リメイク「あの日の声を探して」もあり、こちらは力作ではあるけれど、海外の評価は低い。

そうした中で、「カメ止め」リメイクの「キャメ止め」は「アーティスト」の系列として面白い。

GAGAをはじめ、出資した主な会社のロゴが次々と出てきたあと、粗い画面で始まるワンカットのゾンビドラマ。ほぼオリジナルと同じ展開で、名前まで同じ日本人の名前。が、途中で突然、「ジョナタン!」とフランス語名が呼ばれる。え?と思うと、それは後半で説明されます。

その後の展開もほぼオリジナルと同じ。日本で放送されたワンカット生放送のゾンビドラマをフランスでも同じ条件でリメイクすることになり、日本側からオリジナルを変えるなという指令が出ている。なので人物名も日本名。が、あのジョナタンは、というのがわかるのがリメイクのオリジナルな部分。

つまり、ほぼオリジナルと同じだけれど、それは日本側からの指令であり、というメタフィクション的な枠組みがリメイクのオリジナリティになっている。

その日本側から来るプロデューサーが前作と同じ竹原芳子。監督が日本に差別意識を持っていて(フランス側のプロデューサーから人種差別だと注意される)、真珠湾攻撃の話を出して、これは訳すなと通訳に言うけど、通訳は訳してしまい、竹原が「パールハーバー」と言うところが笑える。

スタッフにはアフリカ系もいて、あちらでは人種差別に敏感なことがわかる。逆に、「カメ止め」では女性のカメラマン助手が才能があるのに女なので差別されているというところは、さすがにフランスではまずないことだろうから、カット。そのため、撮影者がかわって映像が急に芸術的になる、というところはなくなった。これはちょっと残念。

オリジナルは映画館で3回見ているので、ギャグとか全部覚えているのだけれど、それでもかなり笑えた。オリジナルでは無名でもこんなに魅力的な俳優がたくさんいるのか、と驚いたが、リメイクではロマン・デュリス、ベレニス・ベジョら名優たちがさすがの演技を披露。オリジナルの低予算テイストを残しながらも、まともな予算のついた映画の底力を見せる。

オリジナルもリメイクも、映画に参加した人たちが楽しんで作っているのがよくわかる。リメイクでは、それは「アーティスト」の映画愛につながるものだ。



市川コルトンプラザのシネコンの近くにある福家書店が翌日に閉店。セールをしていたけれど、広い売り場には商品はもうあまりなかった。

コルトンプラザはリニューアル予定で、1階の売り場は軒並み閉店セールをしていた。