2013年2月14日木曜日

レ・ミゼラブル

なんだか久しぶりに有楽町で映画を見てきました。
昔は銀座周辺に試写室が多くて、銀座・日比谷あたりはよく徘徊していたものですが、最近は試写は京橋か六本木という感じになっています。で、映画館もあまり行ってないな。いかん。今年度までは水曜が仕事でレディスデーを利用できなかったけれど、来年度は水曜があいたので、がんばります。
というわけで、日劇で見た「レ・ミゼラブル」。日本でも大ヒットした舞台のミュージカルの映画化、ということで、それだけである程度の集客は見込めると思いましたが、予想を上回る大ヒットとか。
そうでしょう、そうでしょう。だって、ここに描かれている世界が、今の日本にとって、他人事でなくなってきているもの。
1度失敗したらやり直せない、とか。食べるだけで精一杯の生活、とか。歌詞にもあったけど、平等なんて天国に行ってから、とか。それでも、人の恩に報いようとする主人公たち、暗い夜も必ず明けると信じる人々。それが歌になって響いてくるんだからたまりません。
もっとも、全編歌の映画はいや、という人には向いてないかもしれませんが、でも、「オペラ座の怪人」もそうだけど、最近のミュージカルはだいたいこうよ。
本当のところをいうと、あまり期待はしてなかったです。私はどうも、最近の、歌が専門でない役者が歌うミュージカルというのが好きでないのです。「オペラ座の怪人」のファントム役についても文句を書きましたが、「スウィーニー・トッド」のジョニデとヘレナ・ボナム・カーターも、あの歌唱力ではねえ。それで、今度はヒュー・ジャックマンやラッセル・クロウやアン・ハサウェーが歌っていると聞いても、また素人の歌かい、と思ってしまうのでした。
しかし、ジャックマンとハサウェーはわりとうまかったです。クロウは最初の方はよかったけど、だんだん苦しく。アマンダ・セイフライドのコゼットだけはほかの女優にしてほしかった。あとは、エディ・レドメインもわりとよかったし、サッシャ・バロン・コーエンとヘレナ・ボナム・カーターのテナルディ夫妻は演技的によかった。そして、一番すばらしかったのは、舞台でも同じ役を演じた本物の歌手、エポニーヌのサマンサ・バークスです。
このエポニーヌは、出番は少ないけど儲け役で、一番有名な歌をソロで歌うし、役柄も、コゼットを愛するマリウスに片思いしながら、彼のために尽くし、男装して革命に身を投じて死ぬという、まさに貧民街のオスカル、という感じ。両親があくどいテナルディ夫妻なのに、純な心を持って育つというか、この映画ではわからなかったけど、革命に加わる少年もあの夫婦の子供だったのね(原作では)。この少年もすごくよかった。
映像も、映画的なところもあれば舞台的なところもありで、よかったんじゃないでしょうか。
「オペラ座の怪人」だと、3人の主役が歌いっぱなし、みたいな感じなのですが、「レ・ミゼラブル」は主要人物の数が多く、歌いっぱなしではないので、その辺も役者にとってはよかったかもです。
ただ、全編歌のミュージカルは、やはり、舞台で見た方が緊張感が途切れなくていいのかな、映画だと幕間もないし、どうしてものっぺらとした感じになってしまうのかな、という気もします。
あと、ラッセル・クロウのジャベールは、あれはだめだね。ジャベールは自分は正義だと思い込んでいる男で、悪役だけど悪人ではないのだが、クロウだと、そういう複雑さとか、内なる闇とか、そういうのが出ない。また、クライマックスの歌が歌唱的に苦しいので、ジャベールの造型という点ではかなり落ちます(舞台は見てないので、比較しているのではないが)。
なんでも、フランスで作られたテレビドラマの「レ・ミゼラブル」が、ジェラール・ドパルデューのジャン・バルジャン、ジョン・マルコヴィッチのジャベールだそうで、このマルコヴィッチのジャベールがいいらしい。そりゃいいだろうなあ。でも、6時間の完全版はDVDになってないようです。
「レ・ミゼラブル」の映画化としては、リーアム・ニーソン版よりは、このミュージカルの映画化は気に入っています。ニーソン版もけっこう人気高いようですが、私はこれの前にクロード・ルルーシュ監督、ジャン・ポール・ベルモンド主演のフランス映画を見てたので、ニーソン版は劣って見えました。このルルーシュ版は、時代を20世紀に置き換えた異色作で、ゴールデングローブ賞の外国語映画賞をとっているにもかかわらず、日本ではまったく無視されていて、ウィキペディアに項目さえないようです(もちろん、日本公開はされている)。allcinemaのサイトのコメント欄にも、どうしてこの映画が有名でないのか、というコメントがあって、同感です。DVD化もされてないらしい。これを機会にルルーシュ版のDVD化を希望します!
というわけで、とりあえずは満足のレディスデーの「レ・ミゼラブル」でした。午後の回でしたが、けっこうお客さん入ってましたね。前の晩にネットで予約したのですが、夜の回は前の晩には中央の席はかなり予約で埋まっていました。

追記 言うまでもなく、原作はフランス文学のヴィクトル・ユーゴーで、私は子供向けの「ああ無情」しか読んでませんが、このユーゴーの娘を描いたのがトリュフォーの「アデルの恋の物語」。今でいうと女性のストーカーなんだけど、公開当時はロマンチックな物語として受け取られていました(映画もそういうふうに描いていた)。