2023年8月28日月曜日

見た映画

 オンライン試写で見せていただいた映画2本。公開はどちらも8月18日なので、見たのはその前です。


クローネンバーグの新作「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」。

痛みを感じなくなった世界、ということですが、痛みのない世界のリアリティがまったくない。

痛みを感じないから麻酔なしで手術ができて、それをショーにしてるとか、止血や輸血はどうすんの?と思うけど、この世界では血が出ないのか?

そういうところが私から見ると決定的にダメ。

映像も特にグロってわけではないし、なにか、全盛期のクローネンバーグにあった切実さみたいなものがない。

と私は感じるのだが、評論家のみなさんの点は高いのね。

クローネンバーグに限ったことではないんだけど、巨匠名匠だともう全盛期はすぎてさほどいい映画じゃなくても点が甘い。

私の若い頃もベルイマンだとみんな絶賛てのはあったけど、ベルイマンは衰えたって感じはなかったよね。つか、ベルイマンクラスだったら絶賛でもよいけどよお。

なんかさあ、今の評論家って権威や名前に弱くないか?

そして「ふたりのマエストロ」。

それなりに成功を収めたフランスの指揮者。が、今は息子の方が指揮者として人気がある。

その父親の方に、ミラノスカラ座から音楽監督就任の依頼。

あこがれのミラノスカラ座! 父親は有頂天になるが、実は息子への依頼を間違って父親のほうにしてしまったのだ。

これはもう、スカラ座のミスなんだから、当然、スカラ座が事情を説明して謝罪すべきだと思うのに、なぜか、スカラ座は息子に丸投げ。息子は母親に丸投げ。結局、母親が夫に説明することになる。

息子は、父親の方がベテランなので適している、とスカラ座に言うのだけど、スカラ座は若い人が欲しいという。そうなのよね、老兵は死なず、消え去るのみ。

息子の周辺にはマネージャーの元妻がいたり、第二ヴァイオリンの恋人がいたり、10代の息子がいたり、また、父親との確執もあり、父と母の間にも過去にはいろいろ問題が、と、人間模様はなかなかに面白い。

特に新しいところはないフランスの人情話なのだけど、こういうちょっといい話がフランス映画には多くて、そこがハリウッドリメイクの対象にされる理由なのだろう。

しかし、指揮者の最高峰は、「ター」のベルリン・フィルと、このミラノスカラ座なんだなあということをあらためて感じた。

追記

父息子で指揮者というと、エーリッヒとカルロスのクライバー父息子がいる。

実は私はカルロス・クライバー指揮のミラノスカラ座の日本公演を見ている。

1988年9月、ミラノスカラ座公演の千秋楽が、クライバー指揮の「ラ・ボエーム」。会場は神奈川県民ホールだった。

4つの演目のうち、3つは東京で見たが、「ラ・ボエーム」は神奈川だと東京よりいい席が取れそうなので、そこにしたのだ。

他はS席でも悪い席ばかりだったが、これだけは前方中央の席。しかも、千秋楽なので、最後に指揮者と歌手がはっぴを着てマス酒で乾杯。

クライバーがはっぴを着てマス酒で乾杯ですよ。

なんかいいものが見られました。