2025年12月2日火曜日

「落下の王国」再見&ヒットの理由は?

 昨日、映画の日に「落下の王国」を見に行った話は前回書いたけれど、実は、いつも座る席が取れなくて、というか、この映画、毎回この席は発売と同時に売れてしまうみたいで、映画の日は前の方を横切る通路のすぐ後ろの席にした。ここは通路の前のエリアはスクリーンに近すぎてここを買う人はまずいない。が、この日は私の前の席に座高の高い人が座ってしまい、通路をはさんでいるにもかかわらずスクリーンの下の字幕ぎりぎりまで頭が見えている状態。この映画は画面が少しでも欠けた状態では見たくないので必死で背筋を伸ばしたりして見ていたから帰ってから欲求不満。で、今朝、シネコンのサイトを見たら、今日はいつも座る席が空いている。明日は水曜サービスデーなのでもうその席は埋まっている。てことは、今日もまた行けっていうお告げ?

というわけで、2日連続見に行ってしまった。今回は6回見たら1回無料の回なのだ。昨日は1000円、今日はただ。


映画の日と水曜サービスデーにはさまれているのでさすがにすいてはいたが、このシネコンの通常デーにしては入っている。昨日の映画の日は、定員300名の広い部屋なので混んでいるというほどではないが、けっこう入っていた。300名というと都心のミニシアターのキャパの2倍だからね。音響も映像もよく、都心で見るより好条件。

2度目なので、のっけから伏線バリバリに張り巡らしているのがよくわかった。細かいところもすごくよくわかって、こういう映画はやはり2回以上見る価値がある。映像も内容もえぐい感じがなくて、わりと気分よく見られちゃうってところも受けてる理由だろう。

作品的には、良作であることは確かだし、愛すべき魅力的な映画だとは思うし、好きな人にとっては傑作だろうけど、客観的に見て大傑作かというと、ちょっとそれはない、という気がする。

幻想の世界の中の人物が現実の世界にもいる、というのはこの種のファンタジー幻想映画ではすでにおなじみのモチーフだし、現実が幻想の中に少しずつ入っていく手法も使い古されたもの。それまでにない新しさ、というものが決定的に欠けている。

特に、絶賛されている映像美。最初に見たときから何か違和感があったというか、これまでに見てきた多数の映画の中の斬新な映像美に比べて、そんなにすごいか?みたいな感覚があった。

今回、その理由がわかった。この映画の映像美、特に世界遺産などで撮影されたシーンって、グラビア雑誌の見開きの美しい写真にそっくりなのだ。

黒山賊が大きく画面に映るシーンなんか、これ、何かの広告で似たようなのを見たよね?と思った。もちろん、広告の方がこの映画の影響を受けた可能性はあるが。

風景の映像美の方は、もう、20世紀からあるグラビア雑誌の見開きの美しい風景写真だし、この映画のそういう映像美って、どこか広告写真の美しさなんじゃないかと思ってしまう。

一方、冒頭のモノクロのメインタイトルの方はそういう既視感はない。私としては、やっぱりここが一番いい。(と書いたけど、ここもやっぱりモノクロの広告写真っぽいかも。)

CGを使わないからすごい、っていうのは、わたくし的にはまあ、どうでもいいので。

メインのストーリーであるスタントマンと幼い少女の話、ダーウィンとサルのウォレス(本物のウォレスはダーウィンと共著で進化論の論文を発表した学者)の話は面白いが、他の人物はそれほどって感じ。

スタントマンと幼い少女の話も、スタントマンの自殺願望がけがのためではなく、失恋のためだということはかなり早くからバレバレになっているので、少女を利用して自殺しようとするこの人物にはまったく共感できない。でも、少女の方は、彼を救いたいと思ってもどうしていいかわからず、彼の物語に巻き込まれていきながらも、なんとか彼を助けようとするあたりのけなげさが実によく描かれていて、こちらはものすごくいい。この少女の演技がまたすばらしいのだ(スタントマン役の俳優も、同情できないにもかかわらず好感を感じて見てしまう魅力的な演技をしている)。

郊外のシネコンに2日間見に行って感じたのは、お客さんが20代後半から50代くらいの女性が多い、それもお一人様の女性が多い、ということだった。男性は映画マニアっぽい人が多くやはりお一人様。2人以上はカップルが少しいる程度。

実は他の地方で見た人のブログ記事でも、お一人様の中年女性が多く、満席の客席にお一人様のおばさんがずらっと並んでる、みたいなことが書かれていたのだ。

都心のミニシアターだと映画マニアっぽい人が多いのかもしれないけど、この映画、大人の女性に受けてヒットしているのではないかと思った。

あのグラビア雑誌の見開き写真のような映像美とか、ハイブラウな大人の女性が読む雑誌を連想する。「TOKYOタクシー」だと70代80代の女性が多かったが、こちらは若めシニアくらいまでの大人の女性のお一人様が観客の中心かもしれない。

「国宝」がシニア女性というか、中高年女性に大人気でメガヒットになったのは記憶に新しいが、「落下の王国」はそれより年下の大人の女性、グラビア雑誌のような美しい映像美を楽しみ、幼い女の子の物語に共感するが、「国宝」のような万人向けではないので友人を誘わず一人で行く女性たちが支えているのでは、と思った(実際は、いろいろな映画館の客層を見ないとわからないので、あくまで私が行った映画館での感想)。

あと、幼い女の子、っていうのが、日本で大人気の映画「ミツバチのささやき」味があるのだよね。その辺もヒットの要因だろう。