2013年10月26日土曜日

マイヤーリング

日本では「うたかたの恋」として知られ、映画やミュージカルやバレエにもなっている「マイヤーリング」。ご存知、オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子ルドルフと男爵令嬢マリーの心中事件をもとにしたラブストーリーで、日本では戦前に作られたアナトール・リトヴァク監督の「うたかたの恋」が、皇太子の心中事件の映画などけしからん、というわけで、戦前には公開できず、戦後に公開されたという逸話もある。まあ、私の世代には、やはり、オマー・シャリフ、カトリーヌ・ドヌーヴの「うたかたの恋」の方が身近ではありますが(でも、どちらも見てない)。
その「マイヤーリング」が、1957年にアメリカでテレビドラマになり、主演がなんとオードリー・ヘプバーンと当時の夫メル・ファーラー(フェラーが正しいのだが、ホセ・フェラーやミゲル・フェラーはフェラーなのに、なぜ彼だけいまだにファーラーなのであろうか)。助演がレイモンド・マッセイ。監督は戦前の「うたかたの恋」のアナトール・リトヴァクがクレジットされているが、実際はリトヴァクは製作で、演出は別の人がやったらしい。当時のテレビドラマは生放送なので、綿密なリハーサルが必要だったから、実際の演出はテレビの演出家でないとできないだろう。ただ、このドラマは戦前のリトヴァクの「うたかたの恋」のリメイクでもあるようで、事実上、リトヴァクの作品といってもいいようだ。
で、アメリカではすでにDVDが出ているのだが、日本では来年1月に映画館で上映されることになり、先日、試写を見てきた。
生放送のテレビドラマだから、当然、フィルムやビデオとして残ってはいない(つか、当時はまだビデオは実用化されてなかった?)。では、どうして残っていたかというと、放送中のテレビ画面を16ミリフィルムで撮影したものが保存されていたのだそうだ。
そんなわけで、画質も音質もかなり悪かったのを現代の技術で修復した、ということだけど、それでも苦しいというか、特に音が大きかったのがちょっとつらかった。全編、ウィンナワルツやクラシックが流れているのだけど、これが音が大きくて邪魔というか疲れる。
ドラマとしてはしっかりとしたつくりで、生放送のせいか、演技が舞台ふうだけれど、オードリーもメルも好演している。ルドルフは日本ではルド様と呼ばれて女性に人気みたいだけど、試写状受け取ったときはメル・ファーラーのルド様で日本のファンは納得するのだろうか、と思ったが、意外によいのではないだろうか。もともとメル・ファーラーはヨーロッパ的な雰囲気の人で、背が高いし上流の雰囲気もあるので、皇太子には合っている気がする。
オードリー・ヘプバーンは今でも日本では大人気だし、ルド様人気もあるから、両方のファンから興味を持たれるかもしれない。
なお、このドラマはカラー放送だったが、マスターの関係でモノクロになっているとのこと。1957年にもうカラー放送してたのか、アメリカは、と驚く。カラーだったらきっとゴージャスだっただろう。