2014年5月7日水曜日

今日は博士の日

5月7日は博士の日だそうです。
理由は「日本で初めて博士号を取得した人が現れた(1888年)」だそうです。
http://www.konnahi.com/content/category/343/


私は博士課程満期退学ですが、私の頃は人文系は博士号を出さなかったので、その頃の博士課程満期退学者は博士号取得者と同等またはそれに準じる扱いをされる場合が多いです。
というわけで、私は博士と同等またはそれに準じる者、ということで。
もっとも、私のいた院の英文科は男子は修士修了や博士途中でアカポスにつけたので、男子は修士修了や博士課程中退が多いはず。その後、大学が人文系でも博士号を出すようになってから論文で博士になった人はいます。また、女子は就職できた人もできなかった人も博士課程満期退学が多数。


そして、いまや男でも理系でも博士課程を出ると悲惨な末路が多い時代に。
博士の日だからみんな博士課程へ行こう、などと言われてだまされてはいけません。
教授が博士課程進学をすすめるのは実験の助手としてこき使える人がほしいか、博士課程の定員割れが困るから、てのはあっちこっちで言われてますね。


スタップ細胞問題で浮上した、理系ポスドク問題。ポスドクというのはおもに理系で使う言葉ですが、博士課程を修了した実験系の博士がとりあえずポスドクになって、あっちこっちの大学や研究所を渡り歩いてアカポス(大学での無期雇用の地位)をめざす人たちのことです。特にスタップ細胞のような生物実験系とでもいうのかな、そういう分野だととにかく1日中実験をしてくれる助手がたくさん必要。もちろん、給料は安く、だいたい1年から5年の有期雇用。しかもアカポスはすでに飽和状態で、ブラック環境で実験しているポスドクの大部分はアカポスにつけません。
苦労して、奨学金の借金をして、博士号まで取って、そのあとに来るのはブラック環境の職場。そしていつまでもポスドクはやっていられないので、その後はどうなるのか、私は知りません。
賢い人は30歳前後で見切りをつけて、企業に就職したり、公務員や高校教師をめざしたりするようですが、がんばっていればいつかアカポスにつける、と思ってしまうと抜け出せなくなる。
私の頃の人文系は男女差別がひどかったし、女だと小保方的女子力や親の七光りがあると論文皆無でも一流大学に就職できたりと、論文が認められるのと就職はまったく別というのがはっきりわかったので、それで私も30歳くらいでアカポスに見切りをつけましたが、心のどこかでは、理系は違うのでは?今は昔と違うのでは?と思っていました。しかし、今回のスタップ騒動であちこちの理系の人のブログを読んで、30年前とあまり変わってないのだな、と思いました。
私の頃は公募はほぼすべて出来レースでしたが、今も公募は出来レースが多いとのこと。小保方氏が理研のユニットリーダーになったのも、公募だったけれど、明らかに出来レースだったのだとか(笹井氏が彼女を選ぶと最初から決めていた)。
小保方氏のようにでたらめな博士論文で博士号を取り、中身がないのに理研のユニットリーダーになり、でたらめな論文をネイチャーに発表してしまえる、というのは、昔とおなじく今もアカポスへの就職の基準はいいかげんなので、がんばって研究したって報われないということをわからせてくれました。


私が30歳くらいでアカポスに見切りをつけたきっかけは、次の3つです。
1 全然研究していない人が女子力と親の七光り(たぶん)だけで一流私大に就職。
2 ある国立大の学科で私を専任講師として採用すると決め、教授会にかけたが、女子だというだけの理由で拒絶された。
3 キネマ旬報で執筆や翻訳の仕事ができるようになった。


1から3はほぼ半年の間に起こったことです。今から考えると、これが運命だったのだな。


以下はツイッターから。
「マスターくらいの時に、ポスドク問題にまったく無関心だった人が、ドクターとるころにすごく焦ってたりするからなあ....人間、自分がそういう立場にならないかぎり無関心なものです。」けん (@mmt_pon) https://twitter.com/mmt_pon/statuses/463488461102518272">2014
「ポスドクしてた人も、アカポスゲットできたら他人事になる。結局、この問題に関心があるのはポスドクやっている当事者だけなんだけど、当事者たちもいろいろなしがらみがあるので表に出て声をあげられない。つまり誰も何も言わないので、ポスドク問題は永遠に解決しない。」
けん (@mmt_pon) https://twitter.com/mmt_pon/statuses/463489756634947584">2014
「そしてパーマネントを取った頃にはまた忘れる…どころか「俺たちだって苦労したんだから」と敵に回ったり」 Tomohiro Takata (@wingcloud) https://twitter.com/wingcloud/statuses/463488777038487552">2014


なんか、理系も文系も昔も今も変わらんな。
私の頃も、アカポス就職の男女差別とかコネがすべてとか、就職できないときは問題にしてても、自分が就職できると敵にまわる。どう見ても私より能力のない人がどんどん就職していって、彼らが私に言ったのは「非常勤の方が気が楽よ」とか「就職すると会議とか多くて大変なのよ」。
おまいら、それで高い給料もらってんだろ、と言いたかったが、就職したいと思っているときは言えなかった。今だから言える。


というのが私の「博士の日」でした。