2013年8月13日火曜日

イル・オー・ノワール=夜の島を探して

昨日はカナダのフランス語圏ケベックの映画「わたしはロランス」を見てきました。
9月初旬公開なので、早速紹介。
現在24歳にしてすでにカンヌ映画祭の常連、この「わたしはロランス」も主演女優賞などを受賞と、神童の呼び声高いグザヴィエ・ドランという若い監督の第3作です。
物語は1989年のモントリオールから始まり、国語教師をしながら作家をめざす男性ロランスが、実は性同一性障害で、女性になりたいと、女性の恋人フレッドに告白。ショックを受けるも、彼を支持する彼女に励まされ、ついに女装して職場の学校へ出かけたりするのですが、当時はまだ性同一性障害への理解がなく、学校はクビになり、町ではいやがらせを受け、そして、しだいにフレッドの心もほかの男性へ。2人は別れ、フレッドは他の男性と結婚し、子供も生まれ、モントリオールとケベックの中間にあるトロワ・リヴィエールという町で暮らしていますが、実はその町にはロランスが別の女性と住んでいる、そして、作家となったロランスが送った詩集がきっかけで、2人の間には愛がよみがえり、夫や恋人には内緒でイル・オー・ノワールという場所に出かけます。
カナダなので、雪が降っていたり積もっていたりするシーンが多く、特にこのイル・オー・ノワールという場所は雪が高く積もり、空は晴れ、道を歩む2人のまわりにはカラフルな衣服が舞うという、なんとも不思議で魅力的なシーン。youtubeにアップされていたので、ごらんください。ただ、せりふは英語に吹替えられています(公開される映画はもちろん、フランス語です)。
http://www.youtube.com/watch?v=Lx0SNALHZms&feature=player_detailpage
映画のせりふはフランス語なのですが、タイトルは英語のLaurence Anyways。「とにかくロランス」という意味で、これは映画のラストに出てくるせりふです(ここはフランス語です)。
このラストもとてもいいというか、こういうふうに終わらせたか、と納得しました。性同一性障害を告白した男性と女性の恋人の10年にわたる愛が描かれていて、題材も異色なのですが、表現が、上のシーンの衣服が舞うシーンのような奇妙で魅力的な映像が満載です。
たとえば、冒頭の埃が舞うベッドシーン(埃が誇張されている)。また、枯葉がたくさん降り注ぐシーン。光の雨が降り注ぎ、カメラが近づくと、その向こうに傘を差したロランスとその母がいるシーン。
それ以外にも映像表現がユニークで、この若い監督の才気を感じさせます。
弱点といえば、子供の頃から子役で活躍し、19歳で初監督、その後も神童の名をほしいままにしているせいか、物語や人物の設定の幅が狭いのでは、と感じるところ。この映画でも、ロランスは作家をめざす国語教師、フレッドは映画のスタッフと、監督が知っている、あるいは想像できる範囲の中だけで人物やストーリーを作っている感じがします。そのあたりはこれからどう変わっていくのか期待したいところ。
そして、この映画のもう1つの魅力はカナダのケベック州の風景。モントリオールの中心地のような有名なところは出てきませんが、普通の人の住む町の様子や、そして、上の映像にあるイル・オー・ノワールという島の風景が目をひきます。
2人が再会するトロワ・リヴィエール(3つの川の意味)は実際にある町でしたが、イル・オー・ノワール(黒の島の意味ですが、夜の島ととってみました)は検索では見つからず、架空の場所かもしれません。Ile au Noirではなく、Ile au Noixという島ならあるのですが。

追記 イルというのはileだと島ですが、彼を意味するilも同じ発音ですね。ということは、イル・オー・ノワールは黒の男、夜の男という意味にもなり、それはゲイや性同一性障害の男性を指す言葉ともとれます。となると、3つの川も何か意味深な感じ。