2014年2月8日土曜日

「ワンチャンス」追記

「ワンチャンス」は例の偽ベートーベン事件のせいで、率直に見られない映画になってしまうのではないかという危惧を抱いている。
でも、ポール・ポッツが優勝した「ブリテンズ・ゴット・タレント」の映像を見て、また、同じこの番組から出たスーザン・ボイルという女性歌手の映像を見て、彼らの出方は日本のスター誕生とは相当に違うと思った。
以下、この2人の「ブリテンズ・ゴット・タレント」での歌唱シーン。
ポール・ポッツ
http://www.youtube.com/watch?v=1k08yxu57NA
スーザン・ボイル
http://www.youtube.com/watch?v=1t8m7CkpIK0
見てすぐにわかるのは、ポッツは平凡な若めのおっさん、ボイルは平凡なというかくたびれた感じのおばさん。その平凡な、見かけからいうと全然ぱっとしない人が歌い始めると、すばらしい美声が出てくるのだ。
西洋のおとぎ話には確かにこういうのがある。見かけはもう全然ひどいのに、すばらしいものを持っている。カエルの王子様とかみにくいアヒルの子とかかな。
ここにある驚きは、その才能が本物でなければ成立しない。
これが日本だったら、まず見かけで判断されてそれでNG。
むしろ見かけで売ろうと考える。
そして見かけと同じく武器になるのが、今まで苦労してきましたというストーリー。
ポッツやボイルみたいなごく普通の人ではなく、普通の人にはないような悲惨なストーリー。
実際は、フジコ・ヘミングは若い頃にヨーロッパに留学した、クラシックの王道を行っていた人。
目の見えない演奏家は国際コンクールで上位に入った実力者。
全然普通の人じゃないが、普通の人にない苦労をマスコミは売り物にする(当の音楽家にとっては才能そのものを見てもらえないからかえって迷惑かも)。
そして、今回の偽ベートーベンは張り子の虎だった。
でも実際は、この偽ベートーベン以外はみな、本物を持っている人で、この偽物騒動とは本当は切り離すべきなんだが、テレビの持ち上げ方が結果的にこういう偽物騒動になったということで、本物を持つ人までが変な目で見られる。それがいやだなと思う。
余談だが、映画「ワンチャンス」ではボッツ本人が吹き替えをして歌っているけれど、実際の映像の「誰も寝てはならぬ」のポッツの歌の方が映画のクライマックスの吹き替えの歌よりもよかった。あれは一期一会の歌だったのだろう。