2023年12月1日金曜日

「ナポレオン」(ネタバレ大有り)

 リドリー・スコットの「ナポレオン」を見て来たんですが。


この映画、どの映画館もあまり期待してないとしか思えない箱割で、それもそのはず、アメリカでの評判があまりよくない。

スコットの映画は最近は不出来なものもけっこうあるんだけど、これはかなり出来が悪い。

のっけから戦闘シーンに切れがなく、その後もなにか気が抜けた映像で、しかもホアキン・フェニックス演じるナポレオンにカリスマがまったくなく、なんでこんなただのおっさんが皇帝になれたんや、と思ってしまう。

ナポレオンが惚れるジョゼフィーヌも、いったいこの女性をどういう人物にしたいのか皆目見当がつかない。最初はナポレオンが一方的に惚れてたのか、結婚届のときにナポレオンがサインに使ったペンをジョゼフィーヌは使わず、別のペンを使い、夫とセックスしても何も感じないみたいで、夫が戦地へ行くと浮気。が、その後は夫婦の絆が生まれたのか、お互い、別れたくないけど子どもができないので離婚するときは、ジョゼフィーヌはナポレオンの使ったペンでサインする。

でも、この2人の関係の描写が全然だめなので、別れたあともつきあっているのだけど、ナポレオンにとってのジョゼフィーヌがどういう存在なのか、ジョゼフィーヌはナポレオンをどう思っているかが全然わからない。人間として描かれてないのだ。

もともとスコットはこういう人間描写はだめな人だったのだけど、ここをしっかりやらないで何をやるのか。

そんなわけで、有名な戴冠式とか、有名なアウステルリッツの戦いとか、これまた有名なボロジノの戦いとか(「戦争と平和」やチャイコフスキーの有名な曲とかの題材になった)、そういう有名な史実が一応出てくるけれど、史実の再現ドラマみたいな感じで進む。

そしてクライマックスはワーテルローの戦い。ここはさすがに力が入っていて、迫力があり、見ごたえがある。でもね、このワーテルローの戦いっていうのはね、イギリスのウェリントン公爵が英雄で、ナポレオンは悪役で、イギリス人はウェリントン側でいけいけどんどんになる戦いなのよ。で、スコットもやっぱりイギリス人だから、ここは、もちろんウェリントンを英雄にはしてないけど、でもやっぱり、ウェリントン側になっていけいけどんどんで、負けるナポレオンの側には全然立ってないのね。

ラスト、ナポレオン戦争でいかに多くの人が亡くなったかを示す字幕が出るので、スコットはナポレオンを批判的に見ているのだなとはわかる。でも、ナポレオンを主役にする以上、批判するにしてももっとその人間を深く描かなければならない。あるいは、ナポレオンに扇動されてしまう当時のフランス人とフランス社会を描かなければならない。でも、そっち方面はもともとスコットはだめなんだろな。

キューブリックがナポレオンを映画化しようとして断念し、かわりに「バリー・リンドン」を映画化したのを思い出すが、スコットはやはり身の程知らずだとしか思えないのだ。


この前「翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて」を見たUC松戸で見たのだけど、来たときは「埼玉」の展示だったところが、映画が終わって外に出たら「スパイファミリー」にかわっていた。


ロビーの「埼玉」の展示はまだあったけど、よく見たら、たこ焼き味のポップコーンの宣伝だったのね。この前はロビーがすごく混んでいて、あまりゆっくり見ていられなかったのだ。



1年間で一番映画料金が安い映画の日でしたが、映画館もショッピングセンターも閑散としていました。