2024年3月29日金曜日

「パリ・ブレスト」&「オッペンハイマー」

 試写で見せていただいた「パリ・ブレスト」。実在の若きパティシエの自伝をもとにした映画とのことで、たぶんいろいろ脚色されているのだろうけど、アラブ系の貧しい移民の息子が苦労しながらパティシエとして成功していく話。


出てくる人たちが、いやな人もいることはいるけど、いい人が圧倒的に多くて、いい話っちゃいい話なんだが、できすぎの感もあって、まあまあだなあという印象。ラストの演出はなかなかよい。

そして、今日から始まった「オッペンハイマー」。6回見たら1回ただの回なので、普通のスクリーンで。


IMAXは500円で見られたのだけど、最近、IMAXは疲れると感じるようになってしまった。年のせいだろうか。あと、この映画、IMAXだとそんなにいいのかな? 「デューンPART2」はよいだろうという気はしたけど。


アカデミー賞作品賞、クリストファー・ノーラン監督賞おめでとう、なんですが、正直、ノーランの映画では一番つまらん。賞とるんだったらほかの映画でとってほしかった。

まあ、これまでと違って、一般人向けの題材で、内容的にもアメリカ人好みなんだろうけど、3時間は長くて飽きた。

役者はよいというか、もともとノーラン、人間描写得意じゃないんで、役者の演技に助けられてる感じ。

シナリオがつまらんのよ。いったい何に焦点を絞ってるのかわからん、中途半端。

原爆の惨状を描かない、と批判されてるけど、エノラ・ゲイすら出てこないんだわ。

トリニティ実験と、あとはマッカーシズムでのオッペンハイマー対ストローズの対決だけど、そこでとってつけたみたいに原爆を作ってしまったことの罪の意識とか入れている。

このマッカーシズムの部分で、話がストローズの私怨とオッペンハイマーの葛藤に矮小化されてしまう。それまでいろいろ出てきたけど、なんかこんなちっぽけな話なのか、と。

原作読むと、オッペンハイマーはわりと軽いやつみたいで、罪の意識と向き合うとかあんまりなさそうだったが、映画もそんな感じで、それはいいんだけど、その描き方がなんだかなあ。もっとほかに描きようがあったと思うが、ノーランじゃそういうのは無理か。

原爆成功に喜ぶアメリカ人たちの姿も、なんだかなあ、で。ノーラン自身がこういうことに関して軽いやつだってことがわかったような気がしないでもない(つか、もともと軽いやつだろう)。

まあとにかく、描き方が表面的で、深みとかまるでないので。

あと、この映画、俳優がヨーロッパ系白人ばかりで、黒人が1人ちょっと出てくるのと、あとは中東系のラミ・マレックが出てるだけ。日本に原爆を落としたのはアジアだからだ、ということは、日本の侵略を受けたアジアの国の人たちも言ってるのだけど、被害者のアジア人無視と、映画に出てくるのがほぼ白人ばかりと、そして、アカデミー賞でのアジア系プレゼンター無視(ダウニー・ジュニアは黒人も無視)がどうも重なって見えてしかたないのだが。

アインシュタインとオッペンハイマーが何を話し合ったかが謎として提出されてるけど、これはボーアとハイゼンベルクが何を話し合ったかという実話をもとにした劇「コペンハーゲン」のパクリだろう。この映画、何を話し合ったかを見せてしまう(もちろん、フィクションだと思う)のも芸がないんだよね。

というわけで、この「コペンハーゲン」の書評をBookJapanに載せたのを別のブログに再録していたので、参考までにリンクを貼っておきます。

SabreClub Archives: BookJapan書評「コペンハーゲン」 (sabrearchives.blogspot.com)

BookJapan、リンク切れと書いてありますが、その後、この書評は復活していました。