2018年12月4日火曜日

1980年代外国映画ベストテン(追記あり)

キネマ旬報の1980年代外国映画ベストテンの特集号が届きました。
表紙のビジュアルを見て、何の映画かわかりませんでしたが、「ブレードランナー」でした。
まさか「ブレードランナー」が」1位とは。それも2位に10票差をつけての1位。
まあ、私も一応、1票を投じておりますが、実は入れるかどうか最後まで迷った1本。
この年代ベストテンでは、どうしても入れたい大好きな作品は別として、それ以外はなるべくほかの人が入れなさそうなのを入れたい、というのが基本路線でして、「ブレードランナー」はほかの人が入れるに決まっている作品。私から見ると、世間で言われるほどの大傑作かな、という気持ちはあり、好きだけど、ほかの人が入れるなら別の作品に、という思いは最後までありました。
でも、結局入れたのは、やっぱり創元推理文庫の「フランケンシュタイン」の解説が34年たった現在までも読者に気に入ってもらえるのは最後に「ブレードランナー」について長々と書いたからだろうと思うのです。公開からまだ2年しかたっておらず、当時は一部の人にしか受けていなかった映画。それを私が公の場所で論じたので、発行当時から読んだ人は「ブレードランナー」について書いてあるのがいいと言ってくださいました。
そんな私にとって記念すべき映画を入れないわけにはいかないと、迷った末、入れたので、2位と10票差になったわけですね。
で、2位以下を見ると、ビジュアルが出ている映画には私が投票した映画は1本もない。今の映画ジャーナリズムの人々と私の好みが完全に違っているようだ。70年代ベストテンはここまで違っていなかった。
選評の方に入れたかった作品を列記していますが、「ダントン」のところは本当は「ファニーとアレクサンデル」を入れたかったけれど「ダントン」なんて誰も入れないだろうと思っていたらほかに1人いてびっくり。「インドへの道」、「サルバドル」、「リトル・マーメイド」も私だけ。「インドへも道」は70年代で上位に入った「ライアンの娘」より出来はいいんですけどね。思い出してもらえなかったのか。物故した監督についてのコラムにもデイヴィッド・リーンの名前がない。
当時1位だった「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」(私のオールタイム・ベストワン)があんまり上の方じゃないも意外。エクステンデッド・エディションが話題にならないわけだ。
1票しか入っていない作品がリストに多数列挙されているけれど、こうした形でもタイトルが出ることに私はこだわって投票したのです。
というわけで、興味深いベストテンでありました。

メアリー・シェリーの伝記映画「メアリーの総て」が今月15日公開とのことで、アメリカのロッテントマトでは評価は低いのですが、一応、見に行くつもり、と思って上映館を調べたら、すごく少ない。シネスイッチ銀座はイマイチ好きな映画館ではないので、MOVIXさいたまかな。
映画に合せていくつかの出版社が「フランケンシュタイン」や他の小説の翻訳に帯をつけたようですが、創元はゲームのキャラ帯がまだついているので、映画の帯はつけないようです。実はキャラ帯でかなりの部数を増刷してるので、当分増刷はないでしょう。帯をつけるところは増刷したか、在庫が多いところと思われます。

12月5日追記
「ブレードランナー」に投票しようか迷った大きな理由に、この映画にはいくつものヴァージョンがある、ということがあった。
初公開時の北米公開版、日本で公開されたインターナショナル版、ディレクターズ・カット版、そしてファイナル・カット版。このうち、北米公開版とインターナショナル版はほぼ同じ、ディレクターズ・カット版とファイナル・カット版はほぼ同じということで、新旧2つのヴァージョンと考えてもいいが、この2つのヴァージョンのどちらを支持するかが、今回の投票では明確でないのだ。
私は初公開版を支持しているが、投票した人がどちらを支持しているのかわからない(両方支持の人もいるだろうけれど)。もしかしたら、投票した多くの人は90年代以降の新ヴァージョンを支持しているのかもしれない。
だとしたら、1位になった「ブレードランナー」は私が支持していないヴァージョンで、その支持していないヴァージョンに私の1票が入ってしまったことになる。
それを避けるために投票しない方がよかったのか?
けっこう悩む。
この映画が今受けてるのは、新ヴァージョンのおかげなのかもしれない。
初公開版だけだったら、ここまで受けてないのかもしれない。(私自身は、新ヴァージョンが出てからこの映画に対する愛が減ったと言わざるを得ない。)
それなら、私は投票すべきでなかった、と思う。
ちなみに、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」は日本公開版、完全版、エクステンデッド・エディションでそれほど大きくは変わっていないようだ(エクステンデッドのみまだ見てない)。
「ブレードランナー」の場合、新旧のヴァージョンで内容が大きく変わってしまっているところが気になるのである。私から見ると、別作品と言えるくらい変わっている。
「フランケンシュタイン」に似ているのは初公開版の方で、それは新版で削除されたナレーションによく現れている。新版になると、「フランケンシュタイン」色は薄くなるのだ。