2022年10月31日月曜日

映画化された古いミステリー小説

 最近、図書館で借りて読んだ3冊。


タイトルを見ればわかるとおり、60年代から70年代にかけてフランスで映画化されたものの原作。3作ともアメリカの小説。

デイヴィッド・グーディスは前から気になっていた作家で、ルネ・クレマンの「狼は天使の匂い」は初公開時に見て、とても好きだった作品。

当時、キネ旬を定期購読していて、読者の映画評にも投稿していた。一次選考は何度も通るのだが、1年間投稿してついに1度も掲載はされず、そのあと同人誌に参加したので投稿はやめてしまった。その投稿した映画評の中で、たぶん、一番の自信作がこの「狼は天使の匂い」評。

ミア・ファローの妹のティサ・ファロー演じる若い女性が、男の手のひらにぐさっとフォークを突き立てるシーンが印象的で、そのシーンを中心に論じた評だったと思う。

「不思議の国のアリス」をモチーフにしたセバスチャン・ジャプリゾの脚本をもとにしたどこか幻想的な展開が魅力的な映画だった。

投稿した文章はもちろん、残っていない。当時はワープロもパソコンもなく、コピー機すら普及していなかった。書いて送ってそれまで。

グーディスの原作は映画とはだいぶ違っていたけれど、若い女性が男の腕にぐさりとフォークを刺すシーンはあったし、原作もどこか「不思議の国のアリス」を思わせた。これをああいう魅力的な映画にしたジャプリゾとクレマンはやっぱりすごい。

トリュフォーが映画化した「ピアニストを撃て」はかなり原作に忠実であることがわかった。

最初のシーンが主人公の兄のエピソードなのも原作と同じ。ただ、原作は最初からシリアスなのに対し、映画はほのぼのエピソードになっていて、そのあと急にシリアスになる。そういう大胆な改変はある。

グーディスの小説としては「ピアニストを撃て」の方が出来がいい。

ライオネル・ホワイトの「気狂いピエロ」は、うーん、映画の方が面白かったよね、見たのだいぶ前だけど。巻末におまけの解説がいろいろついていて、こちらが面白かった。

グーディスの2作はハヤカワポケットミステリで、ポケミス名画座のシリーズで出たようだけど、あまり売れなかったのか、このシリーズ自体がすぐ終わったらしい。この手の古いB級ミステリは2000年代前半に小学館でも翻訳を出していて、私もラウル・ホイットフィールドを2冊訳させてもらったが、全然売れなかった。特に小学館だったからか、ミステリ専門家たちからもあまり応援してもらえないどころか、「手垢のついた往年の名作」みたいな悪口まで書く人がいて、編集者が気の毒だったよ。ミステリの出版社から出ればこういうことは言われないのに。

本についていろいろ検索していたら、むずかしい本をZOOMで講師が解説、というのをやっているサイトがあった。講師は大学院博士課程の院生や大学の先生。1か月4回で6000円とかいう受講料。安いのか高いのかわからないが、40人定員で募集している。もしも40人来てくれたら1か月で24万円かよ、全額ポッケに入るわけではないにしても、ぼろもうけじゃん、と思ってしまった。

もちろん、10人しか来なければ6万円で、一部はサイトに払うから、これではもうからない。

人がたくさん来るにはいろいろ工夫しなければならないし、読む本にもよるわけで、40人定員で30人以上来ているような講座はどんなもんだろうね、とは思うけど、本を読む講座に数千円払うとか、ちょっとする気になれないのである。