2023年7月15日土曜日

「君たちはどう生きるか」(ネタバレあり)

 宮崎駿の新作は、「君たちはどう生きるか」というタイトルと、鳥のビジュアルしか公表されていない、という状態で、7月14日に公開。


ほとんどスニークプレビュー、覆面試写会みたいな方法で、何もわからない状態で映画を見ることになる、というのもまたよいかなあ、と思って、初日に見に行った。


「ミッション・インポッシブル」最新作、17日にIMAX最速上映があって、トム・クルーズのレッドカーペット生中継もされて、一律3500円とか、へえ、と思っていたら、ハリウッドの組合のストライキで宣伝活動すべてできなくなり、生中継は中止だそうです。じゃあやめた、という人には払い戻しもあるようですが、IMAX最速上映と入場者プレゼントだけで3500円て、高くないのかな。

というところで、「君たちはどう生きるか」です。


主人公は戦時中の裕福な家の息子である少年。母が火事で焼死し、軍需工場を経営する父親と田舎の実家に疎開、そこでファンタジーの世界に巻き込まれる。

宮崎駿は父親が軍需工場の経営者で、裕福な家の息子だったというから、主人公は監督の分身ということになる。その彼が(ネタバレ)巻き込まれたファンタジーの世界で死んだ母と、継母になる母の妹を探し、そこで大叔父に出会って、悪意のないよい世界を作るように言われる、というのがおおまかなあらすじ。

タイトルになっている1937年に書かれた本は、主人公が読んでいて、そこに母の書いたメッセージがある、というだけで、この本の映画化ではないよう。冒険活劇ファンタジーだ、という情報があったけれど、ファンタジーだけど、冒険活劇かと言われるとかなり疑問。

ストーリー自体は単純で、それだけ追ってると退屈だが、上の大筋には出てこないディテールやシーンやキャラクターが魅力といえば魅力で、そこの想像力はさすがだなあと思う。でも、ディテールやキャラだけで満足できるかというと、そこまでではない。

(以下ネタバレ)悪意のない世界を作れ、と主人公が言われるのは、戦争が終わったらよい世界を作れということで、でも、主人公自身にも悪意はあるので、それができるだろうか、というあたりは、軍需工場の経営者の息子で、裕福なので戦時中も苦労しなかった監督の負い目であるかもしれない。しかし、そこを深く追究しようとかいう姿勢はまるでないし、母と継母を救おうとするモチーフもどこか中途半端。少年は現実の世界に戻り、そして戦争が終わるのだけれど、戦争中であることがわかるシーンは非常に少ないし、主人公と違って、戦争中に飢えたり爆撃されたりした多数の普通の人は描かれないから、恵まれた主人公はいい気なもんだとしか思えない。君たちはどう生きるかって、あなたはどう生きたのよ、って言いたくなる。