2023年10月20日金曜日

「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」原作と映画(ネタバレあり)

 初日に「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」へ行ってきました。

「翔んで埼玉」続編のポスターがずらり。


そして


原作は映画を見る前になんとか読み終えたので、映画は細かいところまでわりとよくわかりましたが、原作読んでない人はわからないところ多数なのでは?

で、原作について書くと当然ネタバレになるので、ご注意。

原作は3部形式で、第1部は1920年代、居留地に出た石油のおかげで裕福になったオセージ族の人々が次々と殺されたり謎の病死をしたりする様子が描かれます。殺人があってもろくに捜査は行われず、真相究明をしようとした白人たちは殺され、居留地の人々は恐怖に包まれます。

特にモリーという女性は妹が病死、姉が殺され、母が病死、そしてもう1人の妹も夫とともに殺される。モリーの夫は白人のアーネストという男で、彼の叔父ヘイルは長年オセージ族に貢献し、王とまで呼ばれる男。

第1部ではアーネストは怪しい、でもヘイルは善人に見えるのですが、第2部になり、FBIの前身にあたる捜査局からホワイトという捜査官が来たことで、事件が明るみになります。この捜査局は(「J・エドガー」でディカプリオが演じた)有名なJ・エドガー・フーヴァーがトップで、彼が功名心からホワイトを派遣したのでした。

で、第1部でアーネストは怪しい、ヘイルは善人、かと思ったら、第2部ではどっちもワルだが、ヘイルの方が極悪、モリーの家族だけでなく他の人々も殺す陰謀をめぐらしていたことがわかるのです。その後の展開は映画と同じ。

そして第3部、21世紀になり、のちにFBIとなったその捜査局の資料が公開され、石油の利権を手に入れようと殺人をしていたのはヘイルだけではなく、当時の規則で先住民の後見人になった人々が担当した先住民が異常にたくさん死んでいること、医者など立場のある人々が隠ぺいに加担していたことがわかるのです。

この第3部の部分は、この事件がヘイルという1人の極悪人だけによるものではなく、規模は違えど、ヘイル以外にも多数の人がオセージ族を食い物にし、殺していたことを示していて、先住民を人間扱いせず、利用し、殺しまでする当時のアメリカ社会の暗部が暴かれるのですが、この部分、映画ではたぶん、最後にテロップが出て終わりだろうな、と思っていたら、テロップさえ出なかった!

原作は、第1部ではオセージ族の連続殺人や怪死事件を誰が犯人なのかわからないままに描き、第2部では探偵役のホワイトが登場して謎を解き、犯人を捕まえ、有罪にするというミステリーの手法で描かれていて、さらにそれに加えて第3部で、この事件の黒幕は多数いたという事実を明らかにします。アメリカ探偵クラブ賞受賞もうなずける構成ですが、映画は最初からヘイルとアーネストがワルとして登場。人相の悪いデ・ニーロとディカプリオがのっけから、オセージ族の女性と結婚し、殺人を犯して石油の利権をわがものにする陰謀をさかんに話している。

原作が被害者のオセージ族から見た物語なのに対し、映画は加害者から見た物語になっているのです。

原作では第1部ではヘイルはオセージ族に尽くしてきた男に見えるし、アーネストはハンサムな好青年ですが、映画は見るからにワルなデ・ニーロとディカプリオ。他の白人たちもずるそうなやつらばかり。1920年代とはいえ、オクラホマの田舎はまだ無法地帯みたいなところがあり、無法者みたいな白人がたくさんいたのだろうけど、同じ1920年代が舞台の「福田村事件」が加害者を悪に描かないようにしたというのとは対照的で、考えてしまった。

この映画みたいにワルな白人男ばかりが出てくると、この人たちは特別な時代の特別な地域の特別な人たちなのだろうと思ってしまう。「福田村事件」はそれを避けたかったのだ。

実際、この実話は人種差別が根底にある事件だから「福田村事件」と呼応する部分もあるし、これまで隠されてきた国の暗部でもあるわけです。

原作の冒頭で、オセージ族の住む地域では4月に小さい花が咲き乱れ、5月になると大きな草花が生えてきて、小さい花はしおれてしまうので、彼らは5月を「フラワー・キリング・ムーン」と呼ぶ、という記述があります。単行本の邦題「花殺し月の殺人」はここから来ているので、「フラワームーンを殺す者たち」という原題に沿った邦題です。小さい花は弱い先住民であり、あとから咲く大きな草花はあとからやってきて先住民を滅ぼしてしまう白人たちでしょう。(映画はここも、単に花が咲き乱れるだけの描写ですませています。)

原作ではヘイルという極悪人だけを悪とするのではなく、先住民を人間と思わず、だから殺してもそれは殺人ではないと思ったり、彼らを食い物にしようとしたりする白人たちの社会全体を問題にしているのですが、映画は部分的にモリーの家と無関係な人の死を見せてはいるものの、全体としてはヘイルという極悪人とそれに従ったアーネストにだけ物語が集中していて、原作に比べると非常に物足りないと感じてしまいます。

とはいっても、3時間半、まったく飽きずに見られたので、映画としてはきちんとできているとは思います。

シネコンの入っているショッピングセンターでガス展をやっていて、福引の券を持っていたので、やってみたら、なんと3等が当たってしまいました。250ccのボトルです。


京葉ガスと千葉ジェッツのロゴ入り。下はシネコンウォーカー。


福引の券はこれまでも時々ポストに入っていたけれど、会場に行くのが面倒で行ったことがなかったのですが、今回は映画のついでだし、はずれでもビスケットがもらえるらしいので行ってみたら、当たってしまった。この種の福引で何か当たることはめったにないのですが。