2023年10月24日火曜日

「タブロイド紙が映したドリアン・グレイ」

 「フリーク・オルランド」に続いて、ウルリケ・オッティンガー監督のベルリン三部作の1編、「タブロイド紙が映したドリアン・グレイ」。



オスカー・ワイルドの原作は、美青年ドリアン・グレイは年をとらないけれど、肖像画が醜く老いていくという話。が、映画はそのモチーフは全然使っていない。

デルフィーヌ・セイリグ演じるタブロイド紙の元締めみたいな女性、マブゼ博士がタブロイド紙の売上向上のために美青年ドリアン・グレイのスキャンダルを掲載することにする、という設定で、最初に世界のいろいろなタブロイド紙が登場して、日本の代表は「夕刊フジ」。

とはいっても、特にストーリーがあるわけではなく、オペラのシーンがえんえんと続くと思えば、マブゼとドリアン・グレイがいろいろな情景を見たりと、いろいろ。

「フリーク・オルランド」は5つの時代を旅するという設定で、わりと描いているものがわかりやすかったが、こちらはこのエピソードにどういう意味があるのかとかさっぱりわからない。ただ、映像は相変わらずユニークでカラフル。

セイリグの衣装の肩にトランシーバーのアンテナがあって、通信があると肩が光るとか、ブラウン管がいくつも並んだ部屋とか、製作された時代のSFチックな映像が今見るとキッチュな感じ。というか、製作は1984年なので、それよりも前の時代のSFチックなのだが。ブラウン管の映像もモノクロで、60年代かな、と思う。

キャストやスタッフを示す文字も当時のSF映画のコンピューター文字みたいな感じで、SFっぽさを出しているのだろう。古代や中世を感じさせた「フリーク・オルラント」に対して、SFっぽい世界ということかもしれないけれど、SFっぽいところはどうしても古びて見える。一方、地下水道をビニールの舟が行くシーンとかは神話的世界のパロディのようだ。