2023年10月5日木曜日

「ロスト・キング 500年越しの運命」

 リチャード三世の遺骨を発見した女性の実話の映画化「ロスト・キング 500年越しの運命」。

この映画、ロッテントマトの評価があまり高くないので、見ようかどうか迷ったが、題材的に気になるし、スティーヴン・フリアーズの映画はそこそこ楽しめるので見に行った。


評価が低いのは実際にあったことを相当に変えてしまっているからのようだ。「福田村事件」もそうだけど、実話の映画化でも人物やエピソードをフィクション化するのは普通にあることで、それが作品として良い結果になっていればいいのだが、果たして。

と思いつつ見たが、やはりこれは出来が悪い。

フリアーズにしてはぎくしゃくしていてあまり面白くないし感動もしない。

発掘の経緯とか、特定の人を悪者にして話を進める単純さとか、どこが焦点なのかわからない脚本のまずさとか。女性主人公の描写も男性目線の女性差別を感じる。脇役が魅力的でないのもマイナス。

最初は主人公をバカにしていた大学教授が途中から彼女の手柄を横取りするようになるのだけれど、ここが、主人公の手柄を横取りするのが問題なのか、リチャード三世の名誉回復という主人公の目的が無視されることが問題なのかはっきりしないような描写になっている。この2つを重ねているつもりだとしてもあまりにも稚拙な描写。

リチャード三世は悪人ではなかった、テューダー朝によって悪人にされていたのだ、という、歴史的にも事実らしいことから来る主人公のリチャードへの同情、そこから来る愛が彼女の原動力になっている、というところがうまく描かれていない。

彼女が出会う考古学関係者にリチャードという名前の人がいて、というのもあまり生かされていない設定。

最後にリチャード三世が英国王室によって正式に王と認められた、という解説で、なんとか、リチャードの名誉回復というテーマで幕を閉じた、という感じであった。

リチャード三世は悪人ではなかった、というのは、ジョセフィン・テイの推理小説「時の娘」が有名で、前から読もう読もうと思って読まずにいたので、図書館から借りて読もうとしたら、カード持ってるところ全部貸出中。映画の影響大。

500年越しの運命という副題、なんだかピンと来ない。王様と私、の方があってる。