9日から全国でリバイバル上映開始の1975年の映画「新幹線大爆破」。
好きな映画だけど、今見たらがっかりするかもしれないからやめとこうか、いや、やはり行かないと後悔しそう、とずっと迷っていたが、9日の午後になってついに行くことを決意。
行くならMOVIX亀有と決めていたけれど、ここは開始時間が金曜は17時台、土曜は18時台、以後は19時台と、完全夜興行になってしまう。金曜は夜は雨予報だったけれど、やはり金曜に行くことにした。そして、実際、帰りは雨になったが、行ってよかった。
1975年7月5日に公開されたこの映画、ウィキペディアによると、完成が公開直前だったので試写ができなかったと書いてあるが、私は試写会で見ている。公開の2日前の7月3日。場所は手持ちの映画記録だとニッショーホールなのだがイイノホールだったかもしれない(追記参照)。確か、雨だったような気がする。試写会は立ち見が出るほどの盛況で、映画も面白かったから絶対ヒットすると思ったが、なぜか日本ではヒットせず、その後、海外で大ヒットしたらしい。
試写会で見たという証拠は当時からつけていた映画記録と私の記憶にしかない。会場でもらったのはたぶんチラシだけ。当時、こういうものが作られていたそうで、今回のリバイバルで入場特典として配られているが、試写会でもらった記憶はない。
半世紀も前の映画だから映像が劣化しているだろうと思っていたら、ものすごくきれい。4K修復版のすごさよ。国鉄の協力を得られず、隠し撮りやミニチュア模型で撮影したというけど、この時代の映画の感覚としてはこういう方が雰囲気があって、いい。ネットフリックスのリブート版は東北新幹線が舞台で、JR東日本が全面的に協力したというけど、協力すればリアルだろうけど、その分、口も出されるのでは?と思ってしまう。
オールスター映画で、志穂美悦子をはじめとする大スターが秒で出演とか、すごい。秒でもちゃんとせりふあるのもまたすごい。そして主演クラスの人たちがまた演技がうまい。
ツッコミどころは満載なんだけど、そこがまた楽しい。つか、警察アホすぎ。宇津井健が怒るの当たり前、というのは初めて見たときも思った。まあ、この時代は警察とか政府とかを批判するのが普通だったんで、不思議はないが。国鉄職員はみな立派な人に描かれている。
試写で見たときは犯人側の回想シーンがうっとおしいと思ったのだけど、今見るとこの方が深みがある。海外では犯人側の人間描写はカットしたのが上映されたらしい。152分は当時としては長い映画だけど、今はこのくらい普通で、当時も今も全然飽きなかった。
犯人たちは社会からはみ出したりはじき出されたりした底辺の人たちだけど、当時は日本はバブルに向かっていたので、今のような底辺の人々とは違う感じがする。2人の若者が高倉健の人物を慕っていて、彼のためなら命も惜しくないみたいなところは、武士とか騎士とか現代だと仁義を重んじる犯罪組織とか、そういうところと共通する。古い時代の男社会の主従関係みたいな。
国鉄の協力は得られなかったけど、都営地下鉄の協力は得られたのははっきりわかったが、それ以外にも西武鉄道などの協力を得たらしい。都電荒川線の走るあたりに高いビルが全然ないのも半世紀前だなあと思う。風景が、もう、50年前で、なつかしくてたまらなかった。
高倉健が金を手に入れるシーンで、東京創元社のビルが2回も映ったけど、スポンサーか何かになったのだろうか? これ以外にも週刊文春とかTOBUとかいうロゴがさりげなく出てくる。ソニーのテレビはソニーが提供したのだろう。ハリウッド映画もこの時代にはソニーのテレビがよく出ていた。車が走るシーンで共産党の演説会の看板みたいなのがあり、不破哲三の名前が大きく出ていたのだが、スタッフに共産党員がいたとか。でも、今だったら、こういうふうにでかでかと出したりははばかられるだろう。こういうトリビアもディスクで見たらいろいろ発見できそう。
あと、乗客がものすごく自分勝手で、自分さえよければいいのがまたリアルでよい。どうしてもここで降りないと仕事が、っていうのも日本だなあ、と。名古屋すぎたらいつのまにか乗客のせりふが関西弁になってたりして。お経読んでる宗教団体みたいなのも面白い。
何か事件や事故があったときのヤフー・コメント見ていると、職員も大変なんだから、みたいなご意見がとても多いんだけど、そして、日本人は何かあっても整然としている、みたいなニュースもよくあるんだけど、この映画のパニックになった乗客たちについて、職員も大変なんだから、とか、こういうときに冷静じゃないのは日本人じゃない、とか言い出すような連中は当時はいなかっただろうな、という気がする。今はヤフー・コメントとか見ると、やたらお行儀がよくて、そのお行儀のよさを人に強要して、人を黙らせたり行動させないように仕向けるような意見がとても多い。そのお行儀のよさに辟易してたから、こういう自分勝手な連中のパニックがリアルで、人間的で、なんか面白かったのだ。描写がどこかコミカルだったのもある。
カメラを斜めにして撮ってるシーンが時々あって、この斜めの構図がけっこう好きなので、ニヤリとした。単に面白い映画、というだけでなくて、いろいろな工夫やトリビアが楽しめる映画でもある。国鉄の協力がなかろうが、文句言われようが、こういうのを作っちゃう当時の日本映画の熱量もすごい。
追記
調べてみたら、ニッショーホールは1980年開場ということなので、1975年にはなかったことになる(日本消防会館はあって、この年に第1回コミックマーケットが開かれたという)。映画記録は1970年頃からレポート用紙に書いていたもので、それをのちにパソコンのデータにしたものなので、どこかで勘違いがあったのかもしれない。覚えているのは建物の1階にあったこと。初めて行ったホールで、その後は一度も行っていないような気がする。ただ、そのホール、虎ノ門ではなかった気がするんだよね。消防会館は虎ノ門なのだ。
イイノホールの可能性。旧イイノホールの入っていた旧飯野ビル。ウィキペディア掲載の写真に見覚えがある。
Iino hall - 飯野ビルディング - Wikipedia
イイノホールもニッショーホールもビルの建て替えで現在は2代目になっている。