ブライアン・グルーリーのホッケー・ミステリー、「Starvation Lake」読み終わりました。先日、原書370ページ中140ページくらいまでのところで、ホッケーの話でなくなったら面白くなくなった、と書きましたが、150ページくらいからだんだん面白くなりましたね。でも、300ページをすぎるまでは、なんとなく水増し、中だるみ、おまけにこの作家、ジャーナリスト出身で小説は初めてということで、英語の文章が小説としてはあまりうまくない。その上、ホッケーの試合のシーンとか、突っ込みどころ満載だわ、という感じでしたが、最後の60ページくらいは非常によかった。ここで一気に挽回したね。それまでランダムに散っていた伏線がここで効いてくるだけでなく、ホッケーの用具や有名選手の名前や、その他、ホッケーに関することがミステリーとしてのクライマックスにうまく絡んできて、これは正真正銘のホッケー・ミステリー、ただのホッケーが出てくるミステリーじゃない、と思いました。特に、逃げようとする主人公の車が雪にはまって動かなくなったとき、長年愛用していたゴーリーのグローブを使って危機を脱するんだけど、そのときの台詞がいいんだ。
"Sorry, old pal," I said, "One more save, OK?"
ホッケー・シーンはやっぱり突っ込みどころ満載でねえ、スーピーはどう見てもフォワードだろう、前の方でディフェンダーと書いてあったのは、私の見間違いだったかな、と思うくらい、彼はフォワードっぽい。というか、この小説、ほんと、ディフェンスがいないんじゃないかと思うくらい、ゴーリーとフォワードの動きしか書いてないみたいに見えます。そのフォワードの動きも、やたらブレイカウェイばかりで、ラインの組み合わせとか、センターとウィンガーのパスとシュートとか、そういうのなし。おまけにゴーリーの主人公は、次回作ではゴーリーやめてフォワードになるんだと。
主人公のトラウマになっている少年時代の重要な試合の失敗も、相手フォワードをノーマークにさせるのが悪いんだろ、とか、なんでいつもこっちのミスで相手のブレイカウェイになって、ゴーリー防ぎきれずにゴールされちゃうんだろ、そういう下手チームがなんで勝ちあがれるの、とか、3ピリ終了間際に同点にされたら、そこでコーチが流れを変えなきゃ、そのままOTで負けるわ、とか、試合見ているみたいに突っ込みいれてましたが、まあ、それも楽しみかな。
肝心のミステリーの部分は、2004年にNHLで起こったダントン事件を知っていれば、殺されたコーチの過去に何があったかは予想がついてしまいます。つか、この作者、たぶん、ダントン事件をヒントにしてこの話を作っている。以下、ちょっとネタバレになるのですが、ダントン事件というのは、セントルイス・ブルースに所属していたダントンという選手が、カナダのジュニア時代のコーチで、その後もマネージャーなどで腐れ縁が続いていた男を、人を雇って殺そうとした殺人未遂事件で、その背後には、その元コーチがジュニア時代に選手である少年たちを……まあ、あとは言わなくてもわかるでしょう。ダントンはそのコーチに心酔し、両親とも縁を切り、ファミリーネームを捨ててダントンと改名したという、そういう過去を持つ男だったのです。
この小説はこのダントン事件のモチーフをさらに進めてより大きな悪にしていますが、描写が一方的な悪のパターンではないところは買えます。ただ、上に書いたように、小説としての英文のうまさがないので、描写に奥深さがない。だから、それほど胸に突き刺さる感じがないです。
また、この小説は、この1冊だけで完結していない、つまり、二部作か三部作のようにして書かれたのではないかと思います。というのは、最初のプロローグのシーンは結局なんだったのかわからずに終わること。スーピーの人物描写が中途半端なまま終わっていること、スーピーのマリーナをめぐるいさかいに決着がついていないことなど、次回へ続く、みたいな感じで終わっているからです。また、主人公が以前つとめていたデトロイトの新聞社でのトラブルの解決も、数行でかたづけられていて、なんだかなあ。
というわけで、第2作「The Hanging Tree」の代金をコンビニでアマゾンに払ったから、もうすぐ着くと思うので、続きはお楽しみというところです。
追記
第2作「The Hanging Tree」の代金を支払ったのですが、2日たっても配送されず、問い合わせのメールにも返事がない。そこでアマゾンのトラブルについてネットで調べたところ、トラブル山積であることがわかり、最悪の場合、何度もメールしたり電話したりしたあげく、ギフト券で返品の可能性もあることがわかりました。もしもそうなったら、他のネット書店で買おうと思っていますが、がっかりもいいところです。
がっかりといえば、オーストラリア・バレエ団「くるみ割り人形」も、バレエというよりはパントマイムの部分が多くて、演出もあまり面白くなく、がっかり。おまけにセイバーズは開幕1勝したあと、5連敗。やれやれ。