2022年6月11日土曜日

「湖のランスロ」&「ドンバス」

 ロベール・ブレッソンの旧作で日本初公開の「湖のランスロ」と、4年前のウクライナ映画「ドンバス」をハシゴ。



ブレッソンの映画は「ラルジャン」と、あと1本くらい見ていたか見ていないかという感じで、これまで縁のない作家だったが、「湖のランスロ」はアーサー王伝説なのでぜひ見たかった作品。

冒頭、鎧の騎士同士の殺し合いがジョン・ブアマンの「エクスカリバー」みたいなグロ描写。これ以外にもランスロが脇腹を刺されるとか、「エクスカリバー」と共通する。ブアマンもこの映画の影響を受けたのか。

80分余りの短い映画なのだが、アーサー王と円卓の騎士、聖杯探求、ランスロと王妃の恋、モードレッドの反乱まで、「円卓の騎士」や「キャメロット」や「エクスカリバー」で描かれたことが一応入ってるのにびっくり。

そしてその表現。騎士や馬の一部しか見せない手法。これが特に馬上槍試合のシーンで効果的に使われていて、次々と相手を倒すランスロの方は騎士の首から下のからだの一部や馬のからだの一部しか見せない。そして、相手は倒されるシーンだけ。挑戦者が出てくるたびに旗が上がる。そのときの音楽。この様式美。

ランスロ中心なので、ランスロが死ぬところで終わり。他の人物のことはそれ以上描かれない。

登場人物名がフランス語表記なので、頭の中でいちいち英語に変換してたのがちょっと疲れた。ランスロットだけはもとの伝説でもフランス人なのでランスロでよいのだが。

あと、字幕で、アーサー王を殿としているんだけど、陛下じゃないんですかね? 英語だとYour Majestyなんだけど、フランス語だと違うの?

そして、アーサーの甥がアーサーを呼ぶとき、字幕では伯父上となってるんだけど、アーサーは姉はいるけど弟妹はいないので、叔父上が正しいんだが。ただ、この映画に出てくる甥はアーサー王伝説には存在しない架空の人? あとで調べてみよう。



ウクライナ映画「ドンバス」は、ロシアのウクライナ侵略でがぜん時の映画になってしまった作品。内容は8年前にウクライナ東部のドンバス地方が親ロシア武装勢力に占領され、ウクライナと対立する地域になったときの実際に起こったできごとをもとにしているらしい。

最初と最後がフェイクニュースで、こうして情報操作がされて人々が間違ったことを信じてしまうという、今も起こっている状況が描かれるのだけど、その間にさまざまなエピソードがはさまれ、それを通して戦争によって起こること、捕虜に対するリンチとか、なんで軍に志願しないのかと詰め寄られるとか、車を接収されてしまうとか、いかにも戦時にありそうな出来事が次々と描かれる。

背景を知らないとわかりづらいことも多い映画だけれど、映画としての力を感じさせる映画だ。