2025年8月20日水曜日

「W3」60年後のリベンジ

 2014年2月にアニメ界では有名な「W3」事件について書いているのですが(興味のある人はサイドで探してね)、YouTubeで動画をいろいろ見ていたら、この事件についての動画がいくつか出てきました。

出てきた動画を見ると、どうも、この事件は最近は手塚治虫の過剰反応みたいに見られてるのね。2014年の記事に書いたけど、手塚治虫は自身の漫画「ナンバー7」のアニメ化を企画するも、同時期に同じく宇宙の7人の戦士を描く「レインボー戦隊ロビン」が企画されているのであきらめ、かわりに同じタイトルで007のような秘密諜報員が活躍する話を企画、そのとき、主人公・星光一の肩にリスがのっていて、超能力で主人公に協力する、というアイデアを考えた。が、その後、同じように肩にリスがのっている主人公が活躍する「宇宙少年ソラン」の企画を知り、またしても断念、かわりに3人の宇宙人が地球に来て動物に化け、星光一の弟の真一に出会う「W3」を企画して、アニメ化に先立ち、少年マガジンに連載したものの、そのあとに「ソラン」の連載が始まると知って「W3」の連載を中止し、少年サンデーで装いも新たに連載開始した、というもの。

このことで多くの人に迷惑をかけた、ということで、手塚がかなり批判されているようなのだ。

うーん、昔はそんなに批判されてなかったと思うんだが。どうも最近の、何かというと迷惑かけるなとか自己責任とか、そういう風潮の中で変わってきたんかな。

もちろん、迷惑こうむった人は批判していいのだけどね。

その上、「ソラン」の件は手塚の被害妄想みたいなことまで言う動画まであってね。肩の上のリスって、どう見たってパクリだろ。

実際、「ナンバー7」と「ソラン」の共通点って、肩の上のリスしかないと思うんだが、手塚にとってはその肩の上のリスが何より大事だったと思うんだよね。それがなければ、「ナンバー7」は007のパクリでしかない、だから肩の上のリスを考えたんだと思うんだよ。

この「W3」事件は、当時私は鉄腕アトムクラブに入っていて、毎月送られてくる会誌にその辺のいきさつが書いてあったので、リアルタイムで知っていた。連載がマガジンからサンデーに移った事情を手塚自身が書いていたのだ。だから、サンデーの連載を素直に応援していた。実際、マガジンのときよりサンデーの方が絵も内容も好みだった。

それが1965年のことで、そういや、今年は60周年なんだ。

こんな演劇も公演されていたのね。

『W3 ワンダースリー』 公式ホームページ | 2025年上演



そして、手塚プロダクション公式チャンネルでは、テレビアニメの第1回が無料で見られることがわかったので、早速見た。
【公式】W3 第1話『宇宙からの三匹』

メインタイトルのスクショです。


なんかおしゃれなメインタイトルなんですが、なんつうか、フランス映画の「アーティスト」を思い出させるというか、昔のアメリカのコミックやアニメ、サイレント映画を想起させる映像なんですね。

で、この第1回の内容も、絵の動きが昔のアメリカのアニメっぽい。絵自体も、大人の人間はそういう感じで、なんだか、手塚が昔のアメリカのアニメやサイレント映画を再現しようとしてるみたいに感じました。

このメインタイトル、その後、別のバージョンに変わり、歌も歌詞が変わったような記憶があります(注)。なお、手塚プロ公式の映像にはメインタイトルやエンドの部分にスタッフ・キャストの名前は出ません。声優はボッコが白石冬美、プッコが近石真介なのは覚えていました。近石はその後、ジェームズ・キャグニーの吹替で何度も聞くことになるので、よく覚えていましたが、白石ってこんなキンキン声だったっけ?

と、なつかしい「W3」アニメ第1回、と言いたいところですが、実は、この第1回を見たのは今回が初めて。

忘れもしない、1965年、第1回の放送日。当日は日曜日で、父親の職場のイベントがあって、そこには従業員の家族も参加することになっていたのです。これに参加したら「W3」第1回の放送が見られないかもしれない。それで、父親に、放送開始時間までには帰るようにしてほしいと頼み、出かけたのですが、それはかなわず、まったく間に合いませんでした。

当時、柏の新築公団住宅(現UR賃貸)に住んで1年近くたったところで、帰りの常磐線の電車の中で、ああ、今頃、テレビで放送しているのだ、と悲しい思いで帰ったのを覚えています。

2回目からは全部見ているのですが、第1回は見られなかった。それから数十年後、DVDで見られるようになったのだろうけど特に見ることもなく、今回、偶然に見つけて見たのでした。

なので、60年後のリベンジ。

注 YouTubeにある第1回のメインタイトル、もしかして、こっちがあとから作られたものじゃないか、という気がした。最初はもっと普通のメインタイトルで、そのあと、このおしゃれなものに入れ替えられたのでは? というのも、子ども心に、最初の方がよかった、歌詞も最初の方がよかった、と思ったのを覚えているからで、子ども時代の私があのおしゃれなメインタイトルの方をいいと思うかというとビミョー。歌詞も、あとから変わった方のような気がした。もしもそうだとすると、最初のメインタイトルは消滅させられてしまったことになる。スタッフ・キャストが出ないのはそのせいか? まあ、いろいろ表に出ていないことがある作品なのだな。