2017年8月12日土曜日

「君の名は。」チネチッタ千秋楽

去年の8月26日から351日間、「君の名は。」を上映し続けてきた最後の封切館、川崎チネチッタがついに8月11日で終映。
実は最後は混むと思って前日、10日に昼間試写を見てから出かけたのだけど、LiveZoundの重低音が心配で後方の座席をとったら、全然重低音こわくない。視力が落ちてるので後方からだと細かいところよく見えない。
あー、もっと前にすればよかった。
と激しく後悔したので、11日千秋楽も昼間に急遽予約して出かけた。
すでに中央部はおおかた埋まっていたが、残っていた席のうち、比較的前方の席を買う。
しかし、行きも帰りも宇都宮線や高崎線と直通の東海道線が10両編成ばっかりなのはなんなの? お盆休みですいていると思いきや。10両のうち2両はグリーン車だよ。
行ってみたら、前方の席を買ったつもりだったのに、それでも普段よりは後ろの感じ。おまけに背筋をまっすぐに伸ばしていないと前の座席の背もたれがスクリーンにかかってしまう。
重低音はやはり、あの「大地震」劇場体験者からするとそれほどたいしたことはない。もっと前でも無問題だったなあ。重低音の質は「大地震」の頃よりはかなり向上していると思う。
でも、大勢のお客さんと見る「君の名は。」、そして最後は拍手。やっぱり来てよかった。
思えば初めて「君の名は。」を見たときも、「アンヌとアントワーヌ」を見る予定で、当日、出かける前にシネコンのスケジュールを見たら、続けて「君の名は。」を見るとちょうどいいとわかり、予約。今回も当日の昼間に予約、というわけで、当日にネット予約したのが最初と今回の2回だった。まだ上映中のところがあるので、今回が最後ではないけれど。

というわけで、またもや2日連続チネチッタで「君の名は。」してしまったのだけど、10日の昼間の試写の作品はなかなかに奥深いものがあるので、またあたらめて書きます。

それにしても、最初に見たときは、三葉が町長を説得できたとは思えない、という不満を持っていたのが、その後、しだいに考えが変わった。以前の記事でも書いたが、もともと私は三葉と町長の親子の対立に興味を持っていたので、三葉が町長を説得する=娘が父を乗り越える、となるべきだと思っていたのだが、今ではまったく違う考えになっている。
手のひらの「すきだ」という文字を見た三葉が、きっと顔を上げ、町長である父を説得に行くシーン。あそこは対立や対決のシーンではなく、和解のシーンなのだ。
瀧の入った三葉と町長のシーンは対決だったが、このシーンは三葉(瀧)が対決で敗れるシーンだった。それに対し、三葉自身が町長を説得に行くシーンは、母の死によってばらばらになった家族が和解することを暗示している。町長の部屋には祖母と妹がいて、三葉の説得は家族の和解を意味するのではないかと思う。彼らが和解すべき家族だということは瀧の幻想シーンで示されていた。
娘が父を乗り越える、といった家父長的、エディプス・コンプレックス的、あるいは父殺しのテーマを、新海誠は採用しなかったのだ。むしろ、娘と父の対立が物語を通して家族の和解へと至る、というモチーフを選んだ。もともと娘には父殺しは似合わないのだが、この映画を見ると、父殺しやエディプス・コンプレックスはもはや使い古されたモチーフなのだとさえ思えてくる。