2021年7月17日土曜日

「ライトハウス」(ネタバレ大有り)

今月から水曜日は誰でも1200円のTOHOウェンズデーになった14日(本来ならTOHOデー)に「ライトハウス」を見てきた。

サービスデーとあって、けっこうお客さん入っていたけど、エンドクレジットが始まったらさっさと帰る人多数。まあ、わかりますが。

1930年前後にあった、スタンダードサイズよりさらに横幅が狭いサイズ(映画がトーキーになって横にサウンドトラックが入るようになったから)を採用し、モノクロ。映像はなかなかに迫力があり、内容も面白いのだけど、私から見ると、今一つ、突き抜けたものがない。

神話や伝説その他、さまざまなモチーフがところどころに見られるのだが、それが何か有機的に力を持つとか、そういうのが足りない。

公式サイトにはひみつのサイトがあって、そこで解説されているのだけれど、これがインターネット・ムーヴィー・データベースのトリヴィアの完全なパクリ。いいのか?

で、一番肝心なラストの解説が抜けているのだけど、鑑賞後にご覧ください、にもかかわらず、ネタバレなしなのか。ここでは書きます。

孤島の灯台で4週間、2人だけで過ごすことになった老人と若い男。その若い男がしだいに狂気に陥っていく、という話で、この若い男の過去が暴かれたりもする。2人の男はどちらもトーマスという名前なのだが、2人がシンクロするとかいう面はほとんどない。

有機的な結びつきで何かが浮かび上がる、ということを拒否しているのだということはわかる。が、その分、モチーフだけで物足りないと感じる。

老人は海神プロテウス、若い男は人類に火をもたらしたプロメテウスになぞらえていて、老人が裸で立って若い男を見下ろし、目から光線が出るところは笑ってしまった。

鳥を殺したので呪われる、というのはコールリッジの「老水夫」だな。

クライマックスからラストはプロメテウス神話そのもの。

(以下ネタバレ)老人を殺し、灯台の灯に向かう若い男のシーンは「地獄の黙示録」。

そして、火を手に入れた男はプロメテウスと同じように、鳥に肝臓をついばまれる。

というわけで、元ネタあるあるだとふむふむと一応楽しめますが、この程度なの、と思ってしまう。元ネタ気にせずに映像と雰囲気を楽しめる人の方がきっと面白い。