大学の非常勤講師をしているけれど、最近、妙なことが多い。
昔から学生の不正行為といえば、代返、カンニングであったのだが、最近は頼まれもしないのに身代わり受験、身代わりレポート作成というのがある。
昔もとある短大で、私の授業じゃなかったが、別の先生の授業で、答案用紙を2枚取って、自分と友人の分を解答して出したのがいたらしい。筆跡がそっくりなのですぐわかったようだ。
今、私が教えに行っている某大学では、答案用紙は1枚1枚、学生の前に置くようになっているが、おそらく、そうしないと1人で何枚も出すのがいるのだろう。
その大学で、この夏、初めて期末試験ではなくレポートにしてみたが、同じ筆跡で2通でているのが5組くらいあった(内容はごていねいに変えてあるが、表紙の書き方その他がそっくりでごまかせない)。そのうち4組は幼稚園や小学校の教員免許を取るコースである。教師のモラルがないわけだ(いや、一部の人たちなのだけど)。この授業では小テストの段階で、この種の不正が非常に多かったので、何度も注意して減らしたから5組だったので、それがなければ相当数の不正が出たと思う。
学生のモラルの低下はだいたい、大学に原因があると私は思っているが、この大学もやることが杓子定規で現実に合っておらず、それが学生のモラルの低下を招いていると思う。とにかく問題の多い大学で、講師室では講師の不満が炸裂することも少なくない。前に書いた短大と非常に似た雰囲気なので、そういうところには共通点があるのだろう。
他の大学はここに比べたら非常にまともなので、身代わり受験とか身代わりレポートとかはないだろうと思ったら、ここに来て妙なことがあった。
これまでに見た身代わり受験とか身代わりレポートとかは、友人の分まで答案を書いて自分の分と2枚出す、友人の分までレポートを書いて2通出す、というもので、その友人に頼まれてもいないのに勝手にやっている可能性が高いのだが(友人のレポートを写して出す、というのは、身代わりレポートではない)、今回は、大学受験でたまにある、受験生のかわりに別人が受験する身代わり受験みたいなケースかもしれない出来事があった。
その大学(前に書いたのとは別の大学)では、期末試験を欠席した学生には追試の権利があるため、不合格ではなく、別の評価をつける。たいていは授業にほとんど出なかった学生で、追試の申請もしない。今回もそういう学生が何人かいたが、追試の申請はなかった。が、その後、「試験を受けたのに受けていない評価になったのはなぜか」という質問が学生から来たと、教務課から連絡があった。
そこで答案を調べてみると、その学生の答案がない。受験した学生の数は数えていて、答案の数と一致しているかはチェックしている。それで、「その学生は試験を受けていない。学生の勘違いではないか」と教務課に報告した。
そのとき、ふと、思い出したことがあった。その学生は毎回の小テストをほとんど提出していたので、試験を欠席したのを見て、追試の申請をするだろうと思っていたのだ。その後、別の大学の試験やレポートの採点があって、すっかり忘れていた。
この大学ではカードリーダーで出欠がコンピューターに記録され、担当教師はネットで出欠を調べることができる。もっとも、授業が始まる前にカードリーダーに学生証をかざし、そのまま帰ってしまう学生もいるので、毎回小テストをしていたのだが、この出欠をネットで調べたところ、質問をした学生は1回しか出席していなかった。試験の日ももちろん欠席。これで確実に試験を受けていないことがわかった。
では、毎回のように出していた小テストは誰が出したのだろう。同じ筆跡の答案はないので、1人が2人分出したわけではなさそう。ということは、身代わり出席していた人がいたわけだ。それも毎回。
その人が試験も受けてくれたと、当の学生が思ったのかもしれない。
そういえば、教務課からの連絡の仕方も変で、普通なら、学生の番号と名前をいい、こういう質問があるので答案をチェックしてほしい、と言うべきなのに、「試験を受けたのに受けていないという評価になっているが、どうしてかという質問が来た。しかし、試験を受けてもそういう評価にしてはいけないということはないので、先生の判断でそうしたのでしょう」と切り出し、私が「調べるので学生の名前と番号を教えてほしい」と言って、初めて名前と番号を言った(この対応が常識的に考えて変)。教務課は頭から学生の言うことを信じていて、学生が試験を受けたと勘違いしているかもしれない、という考えは浮かばなかったらしい。
試験を受けていないという評価の場合、追試を受けなければそのまま不合格になる。試験を受けたのだから合格にしてほしい、とは、学生は言っていなかったようだ。不合格でいいけれど、試験を受けたのになぜ受けていない評価なのか知りたいと言っているようだった。
で、可能性としては、身代わり出席の人が試験も受けたのか知りたかった、ということかもしれないと思う。身代わり出席の人はさすがに試験のときはばれると思って、来なかったのだろう。あるいは、試験だけは本人が受ける予定だったのかもしれない。さもなきゃ、身代わりの人が本人に試験だけは受けさせるつもりだったとか。この場合は、本人が試験を受けたかどうかを、身代わりの人が知りたくて、本人のふりをして質問したということになる(ここまで行くと、ちと考えすぎかな)。
カンニングとか、教師をだまして不正に単位を取るというのは昔からあるが、最近、気になるのは、本人に頼まれたわけでもないのに不正をして友人に単位を取らせようとする学生が少なくないことだ(上の例は本人が頼んだのかもしれないけど)。そうした学生には、自分が悪いことをしているという意識がない、むしろいいことをしているつもりになっている可能性もある。