2016年12月1日木曜日

クラーナハ展

始まった頃から気になっていた、上野の西洋美術館で開催されているクラーナハ展へ行ってきました。
ルネサンス期のドイツの画家ルカス・クラーナハ(父)の作品と、デューラーなど同時代の画家の作品、ピカソなどによるクラーナハの絵をもとにした作品などが展示されています。
ルネサンス期ということで、肖像画や聖書や物語の絵が多いのですが、なんといってもこの人の魅力は女性の絵。
上はポスターなどに使われている「ユディット」。女性の顔の部分だけを切り取って看板などにしていますが、実は剣を持ち、切り落とした男の首をつかんでいるという絵。
ヨハネの首を皿に載せたサロメの絵もありました。
女性の裸体画も多いですが、豊満なヌードとは少し違う表現。
また、女性の表情が独特で、これはほかの画家ではあまり見ないというか、クールでいて、どこか小悪魔な目が魅力的。気の強そうな女性の絵が多いです。

版画ではこれが気に入りました。ごちゃごちゃ描きこんでいてわけわからんので、じっと見ていたら中心に聖アントニウスがいて、そこに彼を誘惑する怪物がごちゃごちゃとくっついている。現場ではやはり細部を見るのに限界があり、絵葉書買ってじっくり見ました。

デューラーの絵が何枚かあって、どれも見たことあるな、昔行ったデューラー展で見たものだな、と思いましたが、そもそもそれらは西洋美術館所蔵の絵でした。
クラーナハの絵をもとにしたピカソの絵も何枚もあり、その他、クラーナハの作品をもとにした写真とか、クラーナハの絵を現代の画家がアレンジして描いた絵が大きな壁一面に何枚も貼りだしてあったりと、普通の美術展とはかなり違う雰囲気。
カラヴァッジョ展を見に行った直後に西洋美術館が世界遺産になり、その後人が急激に増えたそうで、入口あたりは確かに人が多かったですが、世界遺産目当ての人は安い常設展に行くようで、クラーナハ展はわりとすいていました。ただ、すいていたけど、絵の前でいつまでも動かない人が多くて、必ずしも見やすくはなかったです。5時終了かと思ってあわてて見て、5時前に出てしまったけど、そのあと、実は5時半までだとわかり、しまった、と思いました(見たのは11月30日で、12月からはどうかわかりません)。
西洋美術館はクラーナハ展をやっている場所はあとから造られた部分で、世界遺産の対象になっているのはそれ以外の部分。常設展の場所は私は大好きで、非常に効率よくまわれて、最後に吹き抜けのところに出るのがすばらしいので、ここが認められるのはうれしいですが、でも、世界遺産というほどのものでもないような気が。うーん、世界遺産安売りしすぎ。
クラーナハ展の方は、肖像画や人物の衣装の表現がみごとで、これは写真ではわからないです。布や糸がキラキラ光っているのです。
その一方で、ワタクシ的にはインパクトはイマイチというか、カラヴァッジョ展ほどは感動しなかったなあ。でも、いろんな傾向のある特異な画家であることはよくわかりました。