2021年3月11日木曜日

「シン・エヴァンゲリオン」(ネタバレ大有り)

もう少しあとに行こうと思っていたのだけれど、このところがっかりすることが次々と起こり、気が滅入っていたので、気分転換に映画館へ行くことにした。

ちょうどTOHOシネマズが無料回なので、久々、ららぽーと船橋の大きなスクリーンで見ることにした。


実は「エヴァンゲリオン」は少年少女が巨大ロボットに乗って戦うらしい、ということしか知らなかった。でも、「エンド・ゲーム」も「鬼滅の刃」も「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」も予備知識ほとんどなく見に行って楽しめたし感動もしたので、大丈夫だろうと考えていた。

しかし、上の3作は初心者がとりあえず知っていた方がいい最低限の設定や人物を簡単にまとめたサイトがあったので、それでよかったのだが、「エヴァンゲリオン」はそれがない。

初心者が簡単に学べるサイトがない。あるのはネタバレありの詳しい解説ばかり。ちらちらっと読んでみたけどマニアックで、初心者向けではない。

でもまあ、予約しちゃったので、とにかく行きました。

主人公シンジが父親に言われてエヴァンゲリオンに乗ってがんばったけど、彼が原因で災厄が起こり、シンジは周囲の人間も社会もすべて拒否している、ということだけはわかった。

それ以外の細かいことはやっぱり初心者ではわからないのですが、気になったのは、新海誠のアニメとかぶるモチーフがやたら目についたこと。

悪役であるシンジの父親がなぜこういうことをしているのかというと、というところがまんま「星を追う子ども」。この映画と、「雲のむこう、約束の場所」とかぶるモチーフやシーンが気になる。でも、このあたりは、新海誠が庵野秀明をまねた可能性もあるな、と思っていると、まんま「君の名は。」みたいなのが出てくる。

空をつかもうとする手、引き戸を閉めるシーン、そして、クライマックスのシンジと父親の対決シーンに描かれる父の身の上話、さらにはサラリーマンになった瀧みたいに見えるシンジが外の世界へと駆けていくラスト。

瀧の声を演じた神木隆之介が声の出演をしているので、これは意図的なのか。

父の身の上話のところは「君の名は。」の妻の死がきっかけで家を出てしまう三葉の父のエピソードみたいで、ただ、父親の描写は「シン・エヴァ」の方が深い。三葉の父は妻の死で神主を続ける気がなくなり、家を出て政治家になるのだが、この父親の描写はわりと浅い。それに対し、シンジの父は子どもの頃から一人でいるのが好きだったけれど、妻となる女性と知り合って人生が変わるが、妻を失うことで初めて孤独を知り、そこから悪い方へ行ってしまう。知識を与えてくれる本と、思い通りに音が出るピアノを愛した、とか、いろいろ深い人物描写なのだ。

死んでしまった妻=主人公の母がキーポイントなのも「君の名は。」と似ているけれど、この母親に関するシークエンスの描写も「シン・エヴァ」の方が映像的に迫力があり、深いものを感じる。

ラスト、シンジが愛し合っていたアスカではなくマリと一緒になる、ということについて、ネットで賛否両論があったので、これは見る前から知っていた。ネットでは、シンジとマリが結婚すると言われていたが、実際に見てみると、私は少し違う考えを持った。

マリは「イスカリオテのマリア」と呼ばれていて、これは「イスカリオテのユダ」から来ているのだが、これについて調べたところ、マリはシンジの両親の同級生なんだそうだ。そして、マリはシンジの父を裏切ったので、「イスカリオテのマリア」なのだと。

で、シンジの母が聖母マリアで、シンジが神の子=キリストで、マリはマグダラのマリアだから、シンジはマリと結婚する、ということになるらしい。

私はむしろ、マリは聖母マリアのような存在で、シンジを子宮のような世界から外の世界へ出す役割を担っていたのではないかと思った。なので、ネットの記事で、マリがシンジの両親の同級生、つまり、親の世代だとわかって、やはりそうか、と思ったのだ。

あるいは、マリは2人のマリアの両面を持っているのかもしれない。

というわけで、いろいろと興味深い映画で楽しめた。

思えば、庵野秀明の「シン・ゴジラ」と新海誠の「君の名は。」はどちらも東日本大震災がきっかけでできた作品だったが、その10年後の3月11日に「シン・エヴァンゲリオン」を見に行ったのも何かの縁かもしれない。

追記

子宮のような世界=エデンの園から外に出す、ということなら、シンジはアダム、マリは蛇に化けたサタンということになる。あるいは、サタンにだまされて知恵の木の実を食べたイヴ(エヴァ)だろうか。イヴならばアダムの妻だけれど、イヴがアダムを連れ出すわけではない。(エデンの園は安全な理想郷なので、あの世界とは違うけれど、閉じた世界という点で子宮のような場所と感じた。また、マリを「胸の大きな女の子」と言っているのが、マリを母親的な女性と感じた理由でもある。)

ラスト、実写で撮られたのは山口県宇部新川駅付近で、工業地帯と瀬戸内海が広がっている。エデンの東の荒涼とした土地とはまた違うイメージ。なぜここかというと、庵野秀明の故郷だからだそうだ。

宇部市は大昔、学生時代に旅行で行って、一泊しました。地元の人がとても親切で、よい思い出になっています。