2022年8月17日水曜日

ロータス・イーター

 不忍池の夜の蓮。上野動物園夜間開園で撮影。


翻訳に関していろいろ思うところがあったのですが、アメリカの有名な雑誌の日本版で翻訳講座をやっていて、成績優秀な人は翻訳スタッフとして登録、というのを見て、ちょっと興味あったのでのぞいてみたのですが、

課題の翻訳を半年で12回やって、添削をしてもらえる。

費用は7万円ちょっと。

その雑誌のアメリカ版と日本版の両方を半年分もらえる。

その分を引くと5万5千円くらい。

1回あたりの添削料が4500円くらい。

ま、リーズナブルなお値段でしょう。

その講座はプロの翻訳経験がある人が対象で、ググってみると、産業翻訳で稼いでいる人が受講している。産業翻訳である程度の収入を得られるようになっているが、やはり出版翻訳がしたい、特に歴史や文化といった人文系の翻訳がしたい、と思って受講するようです(ググった限りではね)。

まあ、お勉強としてやる分にはリーズナブルなお値段なのですが、翻訳スタッフとして登録してもらえなければお勉強だけで終わってしまうわけで。

で、その、スタッフになれる人っていうのは、12回の内11回A評価の人、と一応なってるけど、全部Aでもスタッフになれるとは限りません、と書いてある。その一方で、最初は悪くてもその後非常によくなればなれるかもしれないとか、なんかあやふやな基準。

評価はA、B+、B、B-、Cの5段階で、Cはつけないようだ。で、さすがに産業翻訳で稼いでいる人たちだけに、Aの人がわりと多いらしい。でも、ほとんどAってわけにはなかなかいかないので、全体評価はほとんどBで終わるようだ。

修了証書がもらえるので、SNSにアップしてる人がいるけど、Bと書いてある。

そして、そういう人たちが、次の半年も挑戦してスタッフめざすかというと、どうもそうではないらしい。

その雑誌は自然科学から人文科学までいろいろな記事があるようなので、ほとんど映画と小説しかやってこなかった私としては面白そうだからやってみようかな、と思ったが、単に趣味でやって添削してもらって7万円払って終わりでは、お金に余裕がない私としては無理。

だいたいこのコロナ禍に、ファミレスかフードコートで夕食食べて1時間、そのあとコーヒーショップで2時間読書という、非常に危険なことを毎日やっているのは、自宅にエアコンがないので、こうでもしないと暑さで死ぬからなのだ。7万円+αでエアコン買えよ、って話。

もしかして、スタッフにしてもらえるかしら、と思いながら趣味で翻訳するって(私の場合、お金をもらえないのは全部趣味)、ぜいたくな趣味だよね。

その雑誌は翻訳講座で儲けようと思ってやっているのではないと思うけど、仕事になるかもしれないという餌でお金をとって参加させるっていうのは、ほんとはよくない。

日本では俳優を目指す人はお金を払ってワークショップに参加して、そこで監督やプロデューサーと知り合って、うまくすると役がもらえるかもしれない、という感じでしか俳優になれない、と、ハリウッドで俳優をしている日本人男性が書いていた。

その人は新聞配達をしながら学費を稼ぎ、映画学校に通って俳優を目指していたが、日本では俳優になるための道がない、ワークショップにお金を払って参加して、うまくしたら監督やプロデューサーに気に入られて、みたいな幸運しかないとわかって、アメリカに渡ったそうだ。

ハリウッドではどんな小さい役でもオーディションで決まる。まずはせりふが1つしかない役をオーディションで実力でゲットし、次はせりふが2つある役を、というように、実力で仕事を得る階段があるのだ、と彼は言う。

日本では出版翻訳と芸能界というのはけっこう似ていて、出版翻訳のコネを得るために翻訳学校に通うわけだ。お金を払ってワークショップに参加するのと同じ。

アメリカではオーディションに参加費を取るのは法律で禁止されていて、ワークショップでお金を取ったところが法律に触れて訴追されたとか。

仕事につながるかもしれない、と言って、お金をとって参加させるのはやっぱりおかしいのだと思う。純粋に、これは趣味またはお勉強で、仕事を紹介しません、というのならいいのだが、翻訳の世界はそれでは生徒さんが来ないのではないか。純粋に趣味でやっている人もいるだろうけど。