2019年12月24日火曜日

「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」

アニメ「この世界の片隅に」で描かれなかったすずの夫とリンさんの関係を描く完全版を作る、と監督が宣言してから3年の歳月がたち、ようやく完成した「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」。
なんで3年もかかったのかと思ったら、単純に新しいシーンを入れるだけでなく、既存のシーンもかなり作り直したのだという。
実は試写状をいただいていたのだが、試写はまだ未完成のものだというので、これでは結局、映画館に行かなければいけないからと思い、試写はスルー。映画館は27日からの亀有へ行こうかなと思っていたところ、20日から始まっていたTOHOシネマズ流山おおたかの森が、お気に入りのプレミアでの上映。
これは行かねば。
というわけで、クリスマスイヴに流山おおたかの森へ。

スケートリンクができていた。

映画は元作で不満だったところがすべて解消されていた。
怖くなかった憲兵のシーンは怖くなっていたし、隣組もいいんじゃない?と思えてしまうような「隣組」の歌も、元作に比べると控えめ。
そして、主目的だったリンさんに関するシーンの追加はすばらしく、それによって他のエピソードの意味も微妙に変わってくる。
元作にあった、戦争中でも人は仲良く幸せにしているみたいな印象を持たれてしまうところもまったくなくなった。
その分、ユーモアとか楽しさみたいなものが減ったのは事実。すずの兄が南方で活躍するすずの漫画もほとんどカットされた。
片淵監督は元作に対する批判を真摯に検討し、納得した部分は変えたのだと思う。その一方で、やはり批判の的になった、終戦のときのすずのせりふ(原作を大きく変えたもの)はそのままになっているから、ここは監督がこだわったところなのだろう。
3年前に一度見たきりなので、はっきり変わっているとわかるところ以外はどの程度変わっているのか同じなのか自信はないけれど、元作よりも深化した作品であり、単なる完全版ではない、むしろ別の作品であることは確かだ。

プレミアは50席余りしかないので、ほぼ満席の盛況。お客さんはみな真剣に見ていて、3時間近いのにトイレに立つ人もほとんどなく、やはりこういう映画は流山おおたかの森で見たいと思った。クリスマスイヴのショッピングセンターもクリスマスツリーがあちこちにあって、イヴらしい時間をすごすことができた。