2022年1月27日木曜日

「ドライブ・マイ・カー」&「コーダ あいのうた」

 海外で受賞が相次ぎ、上映館が続々増えている「ドライブ・マイ・カー」。金曜日から片道徒歩35分のシネコンでも始まるので、同じ日から始まる「フレンチ・ディスパッチ」とハシゴしようと思っていた。

が、スケジュールを見たら、ハシゴすると間が2時間以上あいてしまう。他の映画館も調べたが、それ以上あいてしまう。

そこで、木曜日にTOHO流山おおたかの森で「ドライブ・マイ・カー」と「コーダ あいのうた」をハシゴすることにした。「ドライブ~」終了と「コーダ~」本編開始の間が15分。トイレも行ける(「ドライブ~」は3時間あるので、終わるとトイレが混んでます)。

しかし、「ドライブ~」が始まると、重低音の騒音(IMAXの重低音か?)が響いてくるわ、大きな音をたてて飲食を続ける客がいるわ、で、ここにしたことを激しく後悔。

それでも、30分かそこらくらいする頃には重低音は消え、客も食べ終えたのか静かになった。この映画はクライマックスに無音のシーンがあるので、静かだったのはとてもありがたかった。「サウンド・オブ・メタル」をキネマ旬報シアターで見たときはラストの無音でエアコンの騒音が、というのがあったけれど、ここ、流山おおたかの森では本当の無音を聞くことができた。(そのキネ旬シアターはしばらく前から「ドライブ~」上映中ですが、連日満席との情報だったので、あそこで見るのをやめたのでした。もし行ってたら、「サウンド・オブ・メタル」の二の舞だった。)

そして、映画が終わり、エンドロールを見ていたら、なんと「おおたかの森」の文字が。

え、ご当地だったの?

流山おおたかの森駅そばの劇場が使われたようです。

ドライブマイカー映画ロケ地撮影場所!目撃情報は? - 動画ジャパン (entame-site.com)

【流山市】流山市がロケ支援し、第79回ゴールデングローブ賞非英語映画賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』。流山のどこが映ってる?観られる映画館は? | 号外NET 流山市・野田市 (goguynet.jp)

エンドロールには協力として、おおたかの森のレストランらしき名前も出ていたのですが、上の記事には書かれていません。

なんにしても、流山おおたかの森で見たのは正解だったようです。

映画はシナリオが非常によくできていて、チェーホフの「ワーニャ伯父さん」のせりふと映画の内容がリンクするようになっていて、効果的です。映像も、こういう見せ方があるのか、と思わせるシーンがいくつもあります。主人公と運転手の女性の過去が重なっていくとか、いろいろな言語で演じられる劇と、それを演じる俳優たちとか、見どころが多く、3時間あっても飽きません。

でも、そのわりには、何かちょっと、軽い印象を受けてしまうのも事実です。

ラスト、顔の傷を治し、韓国で、犬と一緒に買い物に出ている女性運転手、彼女が運転するのは主人公の車、犬はもしかして、あの韓国人夫婦の犬? コロナ禍でみんながマスクをしているあのエピローグが謎めいた終わりとなっています。

続いて見た「コーダ あいのうた」。予告編を見てすぐに、フランス映画「エール!」のリメイクだとわかりましたが、鑑賞記録を調べてみたら、「エール!」は見ていませんでした(あれあれ)。

クレジットにフランス系の名前が多いのは、カナダのケベック州で撮影したからでしょう。

この映画もクライマックスで無音のシーンがあります(静かで助かりました)。「ドライブ~」の無音シーンは意味がはっきりしていないのですが、こちらははっきりしています。ろう者の両親と兄は主人公の歌声を聞けないのだけど、周りの人たちが感動しているのはわかる、というシーンです。

オリジナルのフランス映画ではろう者の役は健聴者の俳優が演じたそうですが、こちらはろう俳優が演じています。「愛は静けさの中に」でオスカーを受賞したマーリー・マトリンが母親役。年をとってますます魅力的な女優になっています。父親と兄の役のろう俳優も素晴らしい演技で、3人が手話で会話するシーンが表情たっぷりで、しかもセックスの話とか平気で手話でするという、これまでの手話イメージを覆すシーンの連続。

実は「ドライブ~」にも手話が出てきて、こちらは手話を使う人物は耳は聞こえるという設定なので、外国語の1つとして手話を出してきているような、ちょっと出し方としてどうなのかな、と思うところがあります。また、手話の描き方も従来どおりで、これを見た後に「コーダ」を見ると、「ドライブ~」の手話の出し方にやはり疑問が残ります。

「コーダ」はろう者の家族の中の健聴者の子どもの苦労や、周囲の人々のろう者への無理解や偏見が深刻ではない形で描かれ、その中で人々が理解を深めていく様子が描かれているのが気持ちがいいです。「聲の形」に比べると少々楽観的すぎるかもしれませんが。

それにしても、この2本を効果的にハシゴできるということで出かけたわけですが、そうでなければ「コーダ」は見なかったかもしれないし、「ドライブ~」をご当地で見ることもなかったでしょう。偶然ですが、よいハシゴでした。