2018年2月9日金曜日

神谷町のWBで「15時17分、パリ行き」を見る。

神谷町のワーナー・ブラザースの試写室にクリント・イーストウッド監督の新作「15時17分、パリ行き」を見に行った。
ワーナーの試写室は日比谷だったのだけど、最近たまに来るワーナーの試写は場所が神谷町になっている。
ここは以前はパラマウントの試写室だったが、パラマウント作品が東宝東和の配給になったので、ワーナーの試写室になったらしい。
パラマウントの頃は試写状が来ることはなく、雑誌の依頼で見に行くくらいだったからほとんど行ったことがないに等しい試写室だった。
先日の「ウィンストン・チャーチル」が開映35分前ですでに補助椅子それもすぐ埋まってしまう状態だったので、こちらはさらに早く出かけた。特に行き慣れない試写室だから迷う恐れもあった。実際、建物に入ってから少し迷い、開映45分前に着いたときにはもう10人くらいは並んでいた。それでも「ウィンストン・チャーチル」のようにすぐにいっぱいにということはなかった。
スターも出ていないし、アカデミー賞にノミネートもされていない、地味な作品だが、イーストウッドの演出が手堅いので面白く見られる。「ハドソン川の奇跡」同様、実話の映画化で、尺が短いのもいい(どちらも90分程度)。
「ハドソン川の奇跡」は航空機の乗客を機長が救う話だが、「15時17分、パリ行き」はパリ行きの高速列車の乗客を3人のアメリカ人の若者が救う話。しかも、この3人の若者と、一緒にテロリストを制圧した男性、テロリストから銃を奪うが首を撃たれてしまう男性とその妻はご本人が演じている。
特に首を撃たれた男性と妻はトラウマになっていそうなのに、よく出演したなあ、と思う。
3人の若者以外は出演シーンもせりふも少ないので、素人でも問題なかったと思うが、主役の3人の若者はかなりのシーンに出ているし、せりふも多いのに素人とは思えない演技。特にせりふまわしがうまいし、声もよいので、声は吹き替えだろうか?(エンドロールにヴォイスキャストというのがあったのだけど)。
それはともかく、この3人は顔立ちとか表情とかが非常にいい。生き生きとしている。
予告編では普通の若者がテロリストに立ち向かったとなっていたが、予告編を見ると主役の1人が明らかに兵士なので、普通の若者じゃないだろう、と思ったが、3人の内2人は兵士、1人が大学生。ただ、2人の兵士は戦闘を経験していない。兵士として、衛生兵としての訓練を受け、1人はアフガニスタンに行ったが、この頃のアフガニスタンはいたって平和だったようだ。
兵士としての訓練を受けていたのだからやはり普通の若者とは言い難いが、それでもこの冷静さ、勇敢さには脱帽する。特に、非常に冷静なのには驚く。
予告編を見たときはなんとなく軍隊賛美になっているのではないかと思ったが、そういう面はなく、3人の若者が自撮り棒を持ってヨーロッパ各地を観光しているシーンなど、ほのぼのとした場面が多い。少年時代のシーンではシングルマザーへの偏見があることが描かれる。
プレスシートでは3人の若者が「運がよかった」とさかんに言っている記事があるが、「ハドソン川の奇跡」が「あれは奇跡でも幸運でもなく機長の能力の高さが乗客を救った」としているのとは対照的。イーストウッドの監督作としては軽さが身の上の作品だが、事件の恐怖よりもその軽やかさを全体のトーンとしているところが後味をよくしている。いわゆる「いい話」の域を出ないのではあるが。