2018年2月28日水曜日

まさかの猫映画「空海」&「アバウト・レイ」(追記あり)

チェン・カイコーの「空海」は見たいと思っていたのだが、日本語吹き替え版しか公開されないとわかり、やーめた、と思っていたところ、あれは猫映画だ!という評判がネットに出てくるようになった。
いわく、「猫かわいい」、「猫好きが号泣する」、「猫が主役」、「猫出ずっぱり」。
うーん、猫出ずっぱり、ではなかったけれど、ほんと、猫かわいい。CGだけどベローチェのふちねこにそっくり。最後は猫の心情にぐっときてしまう。
しかし、なぜか配給元は猫推しではまったくなく、むしろ猫は隠されている。
どうせなら2月22日の猫の日に公開すればいいのに、なぜか2日後の24日公開。
どうやら歴史もので売ろうとしているようだが、実際は魔法のシーンなど、中国版ハリ・ポタみたいなところもあり、本当はファンタジーの好きな若い人に好まれる映画なのでは?と思ってしまう。
猫に関しては、中国語の原題は「妖猫傳」。英語題名は「Legend of the Demon Cat」。まんま魔猫伝説。メインタイトルとエンドロールの文字は日本側が作ったものだけど、それでもこの中国語のタイトルと英語のタイトルはメインタイトルのところででーんと出る(こっちの方がかっこいい)。
そして、そして、中国のポスターはかわいい猫。

この黒猫のかわいいポスターが何種類もあって、化け猫バージョンもあり、この猫ポスターをポストカードセットにしたら売れるのに(ほしい)。
そして人間メインの中国のポスター。よい、実によい。公開日も12月22日と、ニャンニャンニャンになっている(中国の猫はニャンではないかもしれないが)。

ネットでも書かれているけれど、漢詩が出てくるので、やはり中国語バージョンが見たかった。
ただ、吹き替えの方が話はわかりやすいというか、中国映画を字幕で見ると、人物名が漢字で、読み方わからないし覚えにくいという難点があったのだけど(その点、韓国映画は人名がカタカナなのでわかりやすい)、吹き替えだと人名がとてもわかりやすかった。
それでも中国語版字幕版を公開すれば客入ると思うけどなあ。DVDには入るのだろうか。

映画の方は空海と白楽天(白居易)が人を襲う黒猫と楊貴妃の死の謎を追うというもの。原作が夢枕獏だからファンタジーなのは当然。魔法のシーンとか楊貴妃の宴のシーンとかすばらしい。CG全盛なのに長安の町をセットで作ってしまうとか、日中合作だけど中国金がある、中国すごい、日本はちょっと乗っかっただけだろ、て感じである。まあ、中国の経済力を思い知る映画。
話はとにかく猫かわいい、それに尽きます。もう動きがいちいちかわいい。殺人猫なんだけど残酷描写はないし、後半、なぜ猫がそういうことをするのかそのわけがわかってくると、猫の愛、猫の心情に心が揺さぶられる。人間の猫への愛じゃなくて、猫の愛なんである。ネットにも出てたけど、落ち込んでいるときに猫が慰めるように寄り添ってくれた、という経験のある人だったら胸熱。
クライマックスからラストはほんと、猫、猫、猫。字幕版公開してくれたら絶対もう一度行くのに。
空海は一休さんみたいで、白楽天はイケメン。なぜかローマ人(阿部寛)の阿倍仲麻呂が語る極楽の宴のシーンはほんとにすごい。李白も出てくるし。
グッズは半分くらいは猫の絵が入っているようだが、楊貴妃の着物の模様に猫が入った巾着がほしかったのに売り切れていた。ここは松竹系でグッズ売り場が狭いので、トーホーシネマズに行けばあるかもしれない。
(中国語版について、最後に追記しました。)

同じシネコンで「アバウト・レイ 16歳の決断」が最終日だったのでハシゴ。
男になりたいトランスジェンダーのレイは性転換を希望するが、16歳なので両親の同意が必要。が、父親は生まれたときに母と別れ、今は音信不通。母親マギーはいい年して母親離れしてないような女性で、レズビアンのパートナーと住む母親の家に同居。マギーの母でレイの祖母は性転換に反対、マギーも迷っている。父親の同意も必要なので、マギーは彼の居所を探して会いに行くが、彼が新しい家庭を築いていることにショックを受ける。父親は性転換に反対する。
元カレ(結婚はしていなかった)の態度に怒ったマギーは署名する用紙をくしゃくしゃにして丸め、後部座席に放り込んで車を走らせる。車が揺れるたびに紙は座席の上を転がる。このあと、用紙はまた平たく戻されるのだけど、しわくちゃのまま。この紙が子供の性転換についての親の迷いを表していて秀逸だ。
トランスジェンダーに対する世間の悪意はないが理解のないところも描かれているが、それ以上に、性転換を望む子供を目の前にした親たちの動揺がよく描かれている。あとで後悔しないかと恐れるので、親としてはそれは当然だろうけれど、この映画では特に、精神的に自立していない母マギーの抱える問題が描かれる。そもそも元カレと別れたのも彼女の側に責任があったのだ。
ラスト、レイの家族と元カレの家族が一緒に食事をするシーンで幕を閉じるが、ハリウッド映画は時々、こういう、家族っていいな、みたいな映画を作るのだけれど、実際はなかなかこうはいかないのはどこも同じだろうと思う。

追記
さきほど「妖猫傳」中国語版をネットで見てしまいました。
やっぱりこっちの方が断然いい!
猫の声が絶対中国語の方がいい(日本語は野太いおっさんの声でなあ)。
日本人同士の日本語の会話は日本語のままで、日本人俳優の中国語が吹き替えになっています。阿部寛はすべて吹き替え(でも雰囲気すごく合ってる)。染谷将太は一部本人の日本語で大部分が吹き替え(こちらもなかなかよい)。
あと、日本語吹き替え版の最初にある空海についての説明がオリジナル版にはない。
そして、オリジナル版はRADWIMPSの歌はエンドロールのみ。日本版は空海の説明と、映画のなかほどで流れる(ここすごく余計)。
つまり、日本語吹き替え版はオリジナル版のセリフを吹き替えただけでなく、空海の説明や歌を足しているわけです。もしも字幕版を上映すると、オリジナルの字幕版と日本語吹き替え版が同じ映画でないことがわかってしまう。だから字幕版をやらなかったのか?
でも、インド映画なんか、外国向けに短くしたのを公開しているうちにオリジナルの長いバージョンを公開したりもしているので、オリジナル字幕版の公開は可能だと思うのですが。
ただ、ネットでも指摘されてたけど、これ、若い人の方が受ける内容なんですね。だとすると吹き替えの方がいいわけですが、吹き替えメインで、一部オリジナル字幕版を上映をやってほしいと思います。
ネットで見たけど、これ、やっぱり大画面で見ないとだめ。ほんと、オリジナル字幕版公開してほしい。
歴史ものだと思った年齢の高い層にはもうバレてると思うので、これからは若い人向けに猫推し、魔法推しで行ってほしい。そして、リピーター向けにオリジナル字幕版をやってほしい。2回見ると俳優の表情の意味がわかったりして、はまる人ははまると思います。