2019年7月20日土曜日

「翔んで埼玉」&「天気の子」(ネタバレ大有り)

とりあえず来週木曜までは続映が決まったMOVIXさいたまの「翔んで埼玉」。
しかし、今度の土日はさいたまスーパーアリーナとその周辺でファミリー向けのイベントがあるようで、大混雑の可能性。しかも日曜は「埼玉」の上映がない。
というわけで、「天気の子」初日とハシゴしようと、19日金曜日を予約。
平日の午後なのにそこそこ入っている「埼玉」。笑い声も聞こえ、まだまだ新規のお客さんがいるようだ。
私にとっては「埼玉」は2週間に1度見るくらいが新鮮さがよみがえってちょうどいいのだけど、このところMOVIX埼玉が毎週終了予告出しては延長するので、毎週見に行ってしまう。
本当に最後の日には行きたいと思うのだけど、いつまでなのかまったく見当がつかない。

「埼玉」が終わって50分後に始まる「天気の子」。満席ではないけれどよく入っている。
で、感想は、

大人の考えた壮大な中二病映画。

まあ、中二病というのはいい年してまだ中学2年生くらいの精神状態のことをいうので、中学2年生が中学2年の精神状態なのはまったく普通で、中二病とはいわないのだけど。

というわけで、「天気の子」について不満なところを書いていきます。
ネタバレ大有りなので、未見の人は読まない方がいいです。
また、この映画が好きな人、感動した人も読まない方が絶対にいいです。
映画が終わったあと、若い人たちはけっこう感動してたみたいなので。
でも、「未来のミライ」がどうとか言ってる人もいて、私は「ミライ」は見てないですが、なんか「ミライ」みたいなシーンだな、これ、と思ったところはありました。

というわけで、「天気の子」の感想。

どこが不満かというと、

◎シナリオが悪い。「君の名は。」は細部までよく考えられていたが、「天気の子」はあまりよく考え抜かれていない。また、ナレーションがうるさく感じる。「君の名は。」の冒頭やクライマックスの主人公たちのモノローグのような詩的な美しさもない。
◎「君の名は。」と同じパターンの展開やシーンが多いので二番煎じ感が強い。しかも「君の名は。」より相当に劣る。
◎新宿など「君の名は。」に出てきたような風景がまた出てくるが、新しく加わった東京の風景(田端など)がまったく平板で魅力がない。
◎「貧困」を扱ったというが、とても「貧困」を描いたとはいえない。親を失った子供の状態とか、家出少年とか、描写が適当すぎる。背景をよく考えていない。
◎登場人物が薄っぺらい。大人がありきたりの悪役。「君の名は。」の父親や土建屋の社長のような存在感がない。主役クラスのキャラもなんだかなあ。
◎新海誠はミクロの世界を描くのはうまいが、マクロの世界になるととたんに失敗するのは「雲のむこう、約束の場所」や「星を追う子ども」でわかっていたが、今回はそれが最悪の形で出た感じ。「君の名は。」もミクロの世界が後半、マクロの世界につながっていくが、そのマクロの世界は山間の小さな町という、マクロとしては狭い地域だったのがよかったのだと思う。
◎東京が沈没したら日本の沿岸部はみんな沈没するはずなのに、東京だけしか出てこないご都合主義。つか、沈没は地盤沈下で起こるんで、降雨では起こらんのだが、と小一時間。
◎雨の描写が「言の葉の庭」ほど魅力的でない。

という具合に、新海誠の過去作と比べてあまりにもがっかり、なのであるが、これがもしも知らない監督の作品だったら、日本のオリジナルのアニメ作品としては平均点以上の出来であることは確かだから、それなりに評価されたり、人気を得たりするだろうと思う。「君の名は。」が公開当時、不当に低い評価をされたので、その反動で高い評価を得る可能性もある。「この世界の片隅に」のような強力な対抗馬がなければ、「君の名は。」より高く評価されてしまうかもしれない。

それにしても、(以下ネタバレ)ヒロインが天に召されれば異常気象が解消すると信じるのは、ヒロインと主人公の2人だけであり、ヒロインは誰に言われたわけでもなく、自分からすすんで天に召されようとする、というところが中二病だなあと思ってしまうのだ。
この2人以外の人々にとって、異常気象は異常気象であって、誰かのせいでもなんでもないし、誰かが犠牲になって解消するものでもない。1人だけ、ヒロインが犠牲になって異常気象が解消するならそれでもいいとか言ってる大人がいるが、この人物がそう考える背景とか全然描かれてないし、本気でそう思ってるのかも不明。
だから、ヒロインが天に召されて異常気象が解消されたが、主人公がヒロインを地上に戻したのでまた異常気象、というのは、ヒロインと主人公が勝手にそう思っているだけで、実際はヒロインと主人公の妄想の可能性もあるのだが、そういうあいまいさを映画は描こうとしていない。
そんなわけで、ヒロインと主人公に感情移入し、彼らと同じ考えにひたれる人は感動すると思うが、そうでない人はまあ、そうでないのである。
新海誠が公開前に、この結末には賛美両論あるだろうと言っていたが、賛否両論というのはヒロインの決断や主人公の決断のことではなく(賛否が出るようなものではない)、この2人の考えにひたれるかひたれないかなのだ(そういうのを賛否両論とは言わないと思うが)。
この2人の考えというのは、まさにキャッチフレーズにある、「私たちは世界の形を変えてしまった」であり、この「世界の形を変える」というのが、私たちは天気を左右できる、でもそのことを他の人たちは知らないという思想であって、こういう考え方に新海誠がたどり着いたというのが私には非常に残念だ。