2013年3月1日金曜日

これだけのメンツ

ひところ、というのはかれこれ15~20年くらい前になってしまうかもしれませんが、そのころに比べると、うちに来る試写状は激減しているのですが、それでもぼちぼちと来ます(ありがたいことです)。できるだけ見に行くようにはしたいのですが、1本の映画の試写の回数がわりと少ないこと、同じ日時に複数の映画が重なることなど、いろいろな理由で、なかなか全部は見に行けません。
時には、今日はどれにするか、とか、これとこれだったらどっちを優先するか、とか決めなければいけない場合もあります。そんなとき、欧米映画だったら、頼りにするのはrotten tomatoesのサイト。前にも紹介しましたが、批評家の評価と観客の評価の両方が出ているのがよろしい。
さて、昨日、木曜日の試写で私が注目したのは、イギリス映画「ビトレイヤー」。原題はWelcome to the Punch。全然ビトレイヤーじゃないですが、まあよい。この原題の意味、特にパンチが何なのかは、映画の後半でわかります(ネタバレなしね)。
で、rotten tomatoesを見てみると、なんと、イギリスでもアメリカでもまだ公開されてない。なので、評価もなし。1人だけ、批評家がレビューを書いていて、熟れたトマトでなく青い葉っぱが…。あちゃ、だめか。一方、観客は、まだ見てないので、見たいかどうかが出ていて、見たいは85パーセント。おお、よいじゃん。
どういうメンツが出ているかというと、すでにハリウッドスターになっているイギリスの若手で美形のジェームズ・マカヴォイ。そしてマーク・ストロング、アンドレア・ライズブロー、ピーター・ミュラン、デヴィッド・モリッシーという面々。おお、こんなすごい俳優が出ているのか。しかも、ライズブローは「シャドー・ダンサー」でも書きましたが、今注目の女優。この映画を見よう、と決意した一番の理由は、彼女が出ていることでした。
そして、製作総指揮はリドリー・スコット。監督はこれが2作目のエラン・クリーヴィーという人(この人は知らなかった)。
しかし、これだけのメンツでも、映画はつまらなかった、で終わりそうな予感がビンビンしていたのも事実です。でも、ライズブローが出てるなら、見なきゃ。
というわけで、見ました。
のっけからスタイリッシュな映像。うーん、やっぱリドリー・スコットか、いや、スコットもどきか。舞台はロンドンですが、これがロサンゼルスみたいに撮られています。俯瞰でとらえた夜景が何度も出てきます。うーん、ロンドンて、夜景は東京と変わらん。「ブレードランナー」のロスでもないし、「ブラック・レイン」の大阪でもないな。でも、とにかく、映像は一応、スタイリッシュ。なんですが、どうも、これ、なんというか、イギリスってやっぱりおしゃれじゃない、と思ってしまうのですが、もちろん、おしゃれなイギリスの話ではなく、主人公の刑事たちはコクニー訛りだし(そんなにひどい訛りではなく、デイがダイになる程度)、でもなんというか、ロスあたりを舞台にしたB級ハリウッド映画と雰囲気が変わらないのですね。警察官が銃を使うときは許可がいるとか、その辺がイギリスですが。
で、始まったばかりのころは、ジェームズ・マカヴォイの演じる刑事の人物造型がものすごく荒っぽいのが気になります。エキセントリックな刑事のようなのですが、もう少ししっかり人物を作り上げてくれないと。対する大物犯罪者マーク・ストロングの方は、これはもう、出てきただけで、この人はこういう人、とわかるので、こちらの人物造型はOKです。
ライズブローはマカヴォイの同僚の女性刑事ですが、彼女はOKですが、マカヴォイとの関係があまりじっくり描かれてないのが難です。ピーター・ミュランやデヴィッド・モリッシーも、出てきただけで存在感があるので、まったくOK。彼らの以外の俳優や、ちょっとしか出て来ないおばあちゃんとか、みんないい役者で、彼らの演技を見るだけでごっつあんな感じ。これだけのメンツだと、人物造型が荒っぽくても、ストーリーが荒っぽくても、無問題になってしまうくらいです。
一番得してるのはストロングだなあ。後半、特によい。ライズブローはもったいない使われ方です。
ストーリーはまあ、ハリウッド映画によくある展開で、特に驚きはしませんが、イギリスの俳優たちの存在感と演技を楽しめれば、それなりに面白いです。