2013年3月11日月曜日

イタリア映画

日曜日は午後1時くらいに気温が25度を超え、夏日となったのですが、その直後、風向きが南から北に変わり、一気に気温が17度に下がりました。
薄着で外出した人には冷たい風がきつかったのではないかと思います。
北日本はまたしても暴風雪注意のようです。

さて、このところ、イタリア映画の試写を見せていただく機会が多いのですが、先日はイタリア映画2本立て、まずはベルナルド・ベルトルッチ監督の新作「孤独な天使たち」、続いてイタリアの新人監督の「ブルーノの幸せガイド」を見ました。
「孤独な天使たち」は、ベルトルッチが久々にイタリアで、イタリア語の映画を作った、という作品ですが、確かにベルトルッチというと、長い間、英語の映画ばかりでした。初期の「暗殺の森」や「暗殺のオペラ」を見ているのだが、ベルトルッチのイタリア語映画というのは長い間、ごぶさたで、そして最近、初期の作品「ベルトルッチの分身」を見て、主人公がまるでロベルト・ベリーニのような甲高いイタリア語を話しているのにかなりの驚愕を覚えたのです。
この「分身」も映画マニア的に面白いのですが、新作「孤独な天使たち」は、映画マニアでない普通の人にも理解できる若者の成長物語です。
主人公はイタリアの裕福な家の息子。しかし、彼は人とつきあうのが苦手で、精神分析医のところに通わされている。彼は家の地下室で1週間誰ともつきあわずに過ごそうと思い、母親には学校のスキー合宿に行くと嘘をついて、地下室に閉じこもります。
ところが、そこに、長い間会っていなかった腹違いの姉が現れ、奇妙な共同生活をすることに。
この姉というのが、人づきあいの苦手な人には最も苦手なタイプで、やたら大声で騒ぎたてる。主人公の少年は迷惑きわまりないのだけれど、麻薬の禁断症状に苦しむ彼女の世話をするうちに、しだいに成長していく、という物語です。
異母姉は弟の母親は父を奪った女として憎んでいたことがあり、それが原因で、彼女は出入り禁止になったことがわかるのですが、主人公の少年はちょっとマザコンというか、母親の方も息子を箱入りにしていて、息子も母親に、世界で自分たち2人になったらどうするか、みたいなことを言って母を誘惑するようなところがあります。
そんなマザコンの少年が、迷惑な異母姉との共同生活で、ある意味、母親を卒業するというか、そういう展開になっているのが非常に興味深い。
監督は「ラスト・タンゴ・イン・パリ」との関係を示唆していますが、確かに2人の男女が密室ですごすという点が似ているけれど、この映画は2人の若者の成長物語になっているので、多くの人に受け入れられるさわやかな作品になっていると思います。

もう1本の「ブルーノの幸せガイド」は、一夜だけの関係を持った女性が、実は妊娠して息子を産んでいて、その15歳の息子をいきなり主人公のブルーノに預けて、自分は外国へ行ってしまう、という話。いきなり15歳の息子の父親となったブルーノは、勉強はだめ、悪い仲間とつきあって非行をする息子を、なんとかまともにしようと奮闘します。
ブルーノはかつては高校教師でしたが、今はしがないゴーストライター兼補習講師で生計を立てています。ゴーストライターとして、彼はポルノ女優の自伝を執筆するのですが、このポルノ女優が、やはり未婚の母で、15歳の息子を育てている。その息子がブルーノの息子に比べてはるかに出来がいいので、ブルーノはますますあせる、という展開に。
でも、結局は、ブルーノは教師としての自分を取り戻すことで、危機を乗り越えていきます。息子を恐喝したギャングが実はかつての教え子だったというエピソード、そのギャングが刑務所入りしたあとのエピローグを見せるエンドタイトル、いずれも教師としてのブルーノの生き方がわかる描写になっています。
教師として生きる人間は、落ちぶれてもやっぱりこうなんだな、と、浮かばれない非常勤講師の私は妙に納得したのでした。
ポルノ女優とブルーノの交流も楽しく、ほのぼのとした映画です。

このほか、「ある海辺の詩人」というイタリア映画も見ました。
これは、イタリアに出稼ぎに来ている中国人女性と、イタリアの小さな漁村の老人との交流を描く作品。詩的で美しい映像、寡黙な中国人女性と、30年前にユーゴスラヴィアから移民してきた老人との交流と、しみじみとさせる映画なのですが、アジア人として疑問に思ったのは、この映画の中国人女性の立場があまりきちんと描かれていない、ということです。
この映画を見ると、中国人はヨーロッパにも出稼ぎに行っていて、しかも組織に借金をして出稼ぎに出ていることがわかります。ヒロインは中国の漁村から組織に借金をして出稼ぎに来ていて、借金を返せば中国にいる息子をイタリアに呼び寄せることができる、という設定です。
彼女がどうして借金をしてイタリアに出稼ぎに来て、そこに息子を呼び寄せることができるように必死に働いているのかというのがまったくわかりませんでした。
そのあたりの掘り下げがないのが、私には非常に不満な映画だったのです。
また、この映画のヒロインのような中国人女性というのは、欧米人の見たアジア人女性という感じがしてなりません。中国人女性はもっと強いのでは、こんな耐える女性ではないのでは、という感じもします。